当社ではこの10年でお子様から大人まで1万人以上の方のご相談に応じました。その過程で発達障害も年々とらえ方が変化しているのを感じます。
先日、昭和大学附属烏山病院の岩波先生にお誘いを受けて、医師向けの専門誌である 月刊『精神科』(科学評論社)に投稿した論文の中で、当社を利用登録される方の診断名の推移を調べました。こちらにも共有します。
横軸の「年」は当社につながったタイミングではなく、診断を受けた年であることをご理解ください。なお1991年のデータはたまたま該当者がいないため空白となっています。
このグラフからわかることは、ADHDが2013年ごろから急速に増えていることです。またDSM-Vの影響でASD系の診断名が自閉スペクトラム症に集約されてきているようです。一方で、いまだGoogleの検索数が多いアスペルガーは医療の世界では時を同じくして減少して、診断名からは消滅する運命のようです。
驚くべきはこの4~5年、ASD系とADHD系の診断がほぼ半々だという部分でしょうか。2000年代のADHDの割合を見ると10~15%を推移していますので、世の中の発達障害者像も大きく変わるのは納得です。
もちろん現場で支援している肌感覚だと、ピュアなASD、ピュアなADHDということは考えづらく、ほとんどの人は混合型と理解すべきだとは思いますが、それでも診断名という観点からは半々というのが興味深いところではないでしょうか。
ちなみにLDや発達性協調運動障害の診断名は(一つ目の診断名として記す方は)ほとんどいません。これは診断が出来る医師が少なかったり、大人になると日々感じる困り感がASD、ADHDの特徴に集約されることを示唆していそうです。
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この図が掲載された論文(8000字ほど)は 月刊『精神科』に「成人期ADHDの治療と診断」という特集の中に掲載され、近日発売予定です。同じ特集内では母子愛育会愛育研究所の齋藤万比古先生、北海道大学の齋藤卓也先生、奈良県立医科大学の飯田順三先生、聖マリアンナ医科大学の小野和哉先生、そして昭和大学の岩波先生による、疫学・薬物療法・精神療法・症状評価スケールなどの論文を読むことができる見込みです。
文責: 鈴木慶太 ㈱Kaien代表取締役
長男の診断を機に発達障害に特化した就労支援企業Kaienを2009年に起業。放課後等デイサービス TEENS、大学生向けの就活サークル ガクプロ、就労移行支援 Kaien の立ち上げを通じて、これまで1,000人以上の発達障害の人たちの就職支援に現場で携わる。日本精神神経学会・日本LD学会等への登壇や『月刊精神科』、『臨床心理学』、『労働の科学』等の専門誌への寄稿多数。文科省の第1・2回障害のある学生の修学支援に関する検討会委員。著書に『親子で理解する発達障害 進学・就労準備のススメ』(河出書房新社)、『発達障害の子のためのハローワーク』(合同出版)、『知ってラクになる! 発達障害の悩みにこたえる本』(大和書房)。東京大学経済学部卒・ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院修了(MBA)。星槎大学共生科学部 特任教授 。 代表メッセージ ・ メディア掲載歴