平成30年度(2018年度) 障害者雇用実態調査の結果を分析してみた


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最新の障害者雇用実態調査を、特に発達障害について、真正面から分析します。

前回(平成25年度)はオープンで(つまり会社に障害者手帳を呈示して)働いている精神障害者は5万人弱と推計されていましたが、5年後の今回は精神障害者20万人と5倍以上に増えています。これは知的障害者19万人弱とほぼ同じ人数です。

また今回から、精神障害者保健福祉手帳を交付されていても診断が発達障害のみである方は発達障害者として別個に集計されています。オープンで働いている発達障害者は4万人弱と推計されています。ただし療育手帳のみを交付されている方は今回も発達障害者でなく知的障害者にカウントされているようです。

(オープンで就労している)発達障害者の男女比は男女比約4:1と、発達障害者全体での男女比とそう差はないようです。ただし調査方法の限界からクローズド就労の(つまり会社には障害を公表していない)のハイスペック層や、あるいは障害者手帳を提示するメリットのないフリーランスや短時間のパート主婦等が調査対象に含まれていないことは留意したほうが良いでしょう。

男性の平均賃金11.7万円に対し女性の平均賃金が16.6万円と出ていますが、女性のほうがパートなど多様な働き方が社会的にも認められやすいということもあり、低賃金の仕事ではあえて障害者枠を狙うメリットが薄いということも原因の1つとして考えられます。

  • 表4-35「性別、雇用形態別雇用者数の割合」によりますと、男性のうち無期雇用57.9%(うち正社員18.9%):有期雇用42.1%。女性のうち無期雇用34.1%(うち正社員33.1%):有期雇用65.9%。発達障害者の平均勤続年数は3年4ヵ月とのことなので、それを考えますと多くの方は期間の定めのない安定した立場で働けているようです。
  • 表4-36「性別、週所定労働時間別雇用者数の割合」については、男性のうち30時間以上52%、20~30時間41.6%、20時間未満6.3%。女性のうち30時間以上90.6%、20~30時間9.1%、20時間未満0.2%。週20時間(週5勤務であれば1日4時間)以上働けることが障害者枠での就労を考えるときの最低ラインになります。
  • 表4-37「性別、職業別雇用者数の割合」を見ますと、男性のうち48.8%が「販売の職業」、21.4%が「事務的職業」、8.1%が「専門的、技術的職業」。女性のうち60.3%が「事務的職業」、27.3%が「専門的、技術的職業」です。

ただし、発達障害者の雇用上の配慮について「配慮している」とした事業所は40.3%に留まります。また障害者雇用促進のために必要な施策に「外部の支援機関の助言・援助などの支援」を挙げた事業所が65.8%あります。

いくら障害者枠といっても事業会社の上司や同僚が限られた労働時間の中で特別な配慮を行うのは負担感が大きいようです。配慮したくないというより、理解はするが配慮までは手が回らないというところでしょうか。働く発達障害者の方が自らあるいは支援機関を上手に利用して工夫を重ねていくことで活躍の場が大きく広がることになるでしょう。

発達障害者の雇用上の課題については「会社内に適当な仕事があるか」を75.3%、「採用時に適性、能力を十分把握できるか」を39.6%の事業所が心配しています。定型発達者でも新卒社会人の3~4割は3年以内に退職していると言われており、応募してくれた方が自社で矜持を持って活躍してくれるかについて悩む事業所は多いのです。就労経験の少ない方や他の職種へのキャリアチェンジを考えている方は、多少割に合わない仕事だと思っても次に転職するまでに良い経験が積めるかどうかも考慮することが、結果的には望む仕事に就くまでの近道になるのかもしれません。