発達障害の人の就職事情 就労移行修了生の3月入社が多い理由

Kaienマンスリーレポート2017年3月
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Kaien秋葉原の鈴木です。当社の就労移行支援利用者の就職実績と、発達障害*のある人の就職トレンドを毎月お伝えしている「Kaienマンスリーレポート」。今回は2016年度の就職者速報と、2017年3月分のデータを基にお話ししていきます。

2016年度は162名の方が就職されました

新年度になりましたので、昨年度の就職実績を集計しています。速報ですが、2016年度は当社の就労移行支援事業所6拠点合わせて162名の方が就職されました。2015年度の138名に比べて2割程増加しています。就職率や職場定着率などの分析が完了しましたら、ウェブサイトの就職・定着実績のページを更新してSNSなどでお知らせします。こちらのスタッフブログでも昨年度の就職傾向の分析をお伝えする予定です。

3月の就職者数は24名、前年より5割アップ

3月の就職者数は6拠点合わせて24名でした。昨年3月実績の14名に比べ5割以上増加しています。6時間程度の短時間勤務の方も一定数いらっしゃったこともあり平均給与は15.6万円/月でしたが、20万円/月以上の方も2人いらっしゃいました。前回のマンスリーレポートでもお伝えした通り、今年は2月入社の方が少なく3月に入社が重なったのがこれだけ多くの就職者数になった要因の1つだと思われます。

就労移行支援修了生の就職が多いのは12~4月

3月の就職者数が多くなった要因をもう少し丁寧に検討してみます。昨年度の就職者数をグラフにするとわかりやすいのですが、4月・12月・3月の就職者が他の月に比べて多くなっています。このような傾向になる原因を検討しましたが、

  • ①一般枠の新卒採用が春から秋に行われるので一段落した秋以降に障害者枠採用が活発化する
  • ②新卒だけでなく中途も4月の年度初めにまとめて採用している
  • ③障害者雇用納付金申請前の駆け込み採用

などが考えられます。

①ですが、企業の人事の方の立場からするとやはり一般枠の採用がメインの業務になるため、障害者枠の採用は繁忙期を避けて行っているという印象があります。

また②に関しては例えば当社経由の求人で昨年12月には内定が出ているが入社は一律4月入社という企業もありました。多くの場合は内定後手続きが間に合う中で最短の入社日が設定されますが、採用計画によって入社時期を明確に決めて採用活動を行っている企業もあります。

法定雇用率を達成するために年度末に障害者採用のニーズが高まることも

③について説明するために、企業が1年のうちで障害者雇用の実績をいちばん気にする時期はいつなのかについてお話しします。

申請時期 報告先 報告内容 審査される内容
4月~5月中旬 独・高障求 前年度の障害者雇用状況 障害者雇用納付金徴収の有無
6月~7月中旬 ハローワーク 6/1現在の障害者雇用状況 雇用指導の有無

企業が障害のある人の雇用状況を報告する機会は1年に2回あります。まず5月中旬までに前年度1年間の雇用状況を高障求(独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構)に申請します。前年度の雇用率が法定雇用率よりも下回っていた場合は、障害者雇用納付金として不足人数あたり50,000円/月が徴収されます。つまり③法定雇用率を満たしていない企業の場合は年度末までになんとか雇用率を満たす人数の障害のある人を雇用したいというニーズがあります。

今回3月の就職者数が多かった理由のもう1つは駆け込み採用もあったのではないかと想像しています。駆け込みというと言葉の響きはあまりよくありませんが、就職してしっかりご本人が働ければご本人にとっても企業にとってもハッピーであることに変わりないので、しっかり働けているかを今後の定着支援で確認していきたいと思います。

ちなみにもう1つの障害者雇用状況報告のタイミングですが、7月中旬までに6月1日現在の雇用状況をハローワークに報告します。雇用率や雇用人数が一定以下の場合、ハローワークから行政指導が入り、雇い入れ計画を作成して適正に実施するよう指導されます。適正に雇い入れ計画を実施しない企業には勧告が行われ、勧告に従わない場合は企業名が公表されることもあります。

希望にマッチした求人が出たタイミングを逃さないよう事前に応募準備をしておこう

月ごとの就職しやすさにばらつきはある程度あるようですが、だからといって応募するご本人が「夏から秋は就職しにくくなるからどうしよう」などと思い悩む必要はありません。今回の分析からアドバイスとしてお伝えしたいのは、企業によって採用ニーズが高まる時期がそれぞれあり、そのため良い求人が出てきたら躊躇しないで応募をする方が良いということです。そのタイミングを逃すと次に同じ企業や他企業で同じような求人が出てくるタイミングはいつになるのかは「企業のみぞ知る」で応募する側にはわかりません。

Kaien経由の求人で言うと求人情報の公開から書類応募締め切りまで2週間程度設けられることが多いですが、そこから応募書類の準備をゼロから始めるとなると日程的にかなり厳しいです。そのため事前に応募書類はどの企業でも使えるひな形を準備しておいて、気になる求人が出たらその企業用にさっとアレンジして提出できるようなところまで整えておくのが大切です。また面接に進むことができた場合にどんな受け答えをすればよいかという想定問答もひな形を事前に準備しておけると安心です。チャンスを自分の手でつかむことができるように日頃から就活力をコツコツと磨いておきましょう!

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*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます