Kaienペアトレ(※)を実施しました。昨日が第1回。2つのセッションに合わせて50人以上の参加がありました。これから2019年7月まで7回のセッションと個別相談を行って、我が子をどのようにナビゲートしていくかを考えたいと思っています。初めての企画ですので、想定外のことが起こることを予想しています。昨日は運営としては特にバタバタせずできたのですが、やはり想定外と言うか、思ったほど刺激を与えるのは難しそうだなぁと思わされました。なかなか難易度が高い企画です。
(※)Kaienペアトレ:10代以降の発達障害*を考えるご家族向けの『就職準備勉強会』
ペアトレの難しさ
自分も発達凸凹の特徴がある子どもの親ですので、支援者と親の立場から考えるのですが、まずは現代社会や今後の未来を、親自身がどのように理解しているか?そしてそこでどの様な生き方を望んでいるのか(そもそも世界観・人生観)という大上段の話がとても重要になると思っています。正直ここがしっかりとご家族(つまり夫婦、ご本人、その他きょうだいや祖父母など)で議論したり共有したりされていれば、あとはどのようにもなるよね、という印象です。
でも実際に今回のペアトレでするのは、「現状共有」や「ノウハウ」的なところ。例えば、「障害者枠とは」「一般枠とは」「適応不全の時に」「進学の違いによる就職への影響」「働きはじめた後に知っておきたいこと」など、事実やそれに基づく考え方を伝えていくものです。世界観と人生観が違うと、この辺の事実やノウハウの受け止め方も違うわけですよね。それをわかった上で、数十人に一度に伝えるのは大変に難しいことだということです。
また当然ですが、お子さんの性別や、年齢、性格や特徴、も千差万別と言えます。それによってわかってほしいものも異なる印象もありますし、発達障害的な界隈にはご自身も特性の強い親御さんも相当数いらっしゃるわけで、そのあたりの受け取り方の違いも考えた上でのレクチャーが求められます。
かつ根本的には、自分でもこれだけ苦労するならば、当社の社員ってかなり日々、親御さんに応対するのは大変だろうなということに愕然としました。社員がご家族と接する時は1対1で接することがほとんどですし、学習や就活の支援で何度もご本人と接した上でお話させていただくので、より具体的な話で噛み合う可能性が高くなるでしょう。でも将来を考えた時に、ご家族に何を知ってほしいというのは、支援もだいぶ積み重ねて、かつ世の中の流れを理解していないといけなくて、本当に難易度が高いものなのだなぁと、気が遠くなるような印象を持ったわけです。どうやったら自分の属人スキルで開催するイベントではなく、般化できるのかな?ということですね…。
いろいろわからない、けれども、割り切れるには?
一つ光明があるとしたら、正直な話、自分自身もレクチャーをしながらも、わからないことだらけだということであり、また数年前に感じていたことが間違っていることに気づいたり、数年前に予測していたことが外れることもままありながらも、それでもそれなりに発達障害の人の未来に希望が持てているということですね。最低限の知識を持ち、相当数の人を支援してきて、ここはわかる、ここはわからない、と割り切れることが重要なのだと気づきました。
世界観が様々であっても、個々の状況がそれぞれ違うのでアドバイスが大きく異なったとしても、今回のセミナーを通じて参加していただいた父母たちに最低限の知見を共有して上手に割り切ってもらえることを目標にするということですね。そして当社のスタッフにも今回のレクチャーでの学びを通じて、そういうエンパワメントができるノウハウを伝授するきっかけづくりをしていきたいと思います。
やや抽象的になりましたが、発達障害の支援の奥深さを改めて感じられました。探究心という高尚なものではなく、うまくいかない悔しさのようなものですが、この半年でもう一段、支援者としてレベルアップしたいと思います。
文責: 鈴木慶太 ㈱Kaien代表取締役
長男の診断を機に発達障害に特化した就労支援企業Kaienを2009年に起業。放課後等デイサービス TEENS、大学生向けの就活サークル ガクプロ、就労移行支援 Kaien の立ち上げを通じて、これまで1,000人以上の発達障害の人たちの就職支援に現場で携わる。日本精神神経学会・日本LD学会等への登壇や『月刊精神科』、『臨床心理学』、『労働の科学』等の専門誌への寄稿多数。文科省の第1・2回障害のある学生の修学支援に関する検討会委員。著書に『親子で理解する発達障害 進学・就労準備のススメ』(河出書房新社)、『発達障害の子のためのハローワーク』(合同出版)、『知ってラクになる! 発達障害の悩みにこたえる本』(大和書房)。東京大学経済学部卒・ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院修了(MBA) 。 代表メッセージ ・ メディア掲載歴・社長ブログ一覧
*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます