Kaien/ガクプロの藤です。先日、2017年度のガクプロ生の就職実績をまとめました。合計で、36名の方が内定・就職することができました。よい機会なので、最新の就活事情も交えながら、発達障害*学生の就活の秘訣をまとめてみたいと思います(これまでにも、当社のページにてご紹介していますが、改めて)。
ポイントは、①早期から動く、②親御様はトレーナー的に介入してよい、ただし企業選びで介入しすぎると決まらない、③一般枠・障害者枠いずれも自己理解がカギだが、自己理解するには経験→フィードバックの積み重ねが重要、の3点です。
就活のポイント① 早期から動く
2017年度は、とにかく売り手市場(学生にとって就職しやすい)の影響をガクプロ生も受けた年でした。世の中の人手不足が影響していると思います。内定を取った学生の傾向としては、一般枠でも障害者枠でも言えることですが、早期から活動している、応募し続けられている、ということが挙げられます。
近年の就職活動早期化も相まって、一般枠の就活がはじまるのは実質3年生の夏ごろからとも言えます。多くのガクプロ生は学業と就活の両立が難しいので、就活をはじめるのは卒業してから、ということも珍しくありません。しかし、一部の衝動的に動けるADHD強めの学生であれば、① エントリー数を多くできるので通過する確率も上がる ② おしゃべりの力が高ければ面接で評価されやすい といった背景により、内定が取りやすい状況でした。もちろん、これはあくまで一例です。面接が苦手な学生も、面接練習や自己分析を積み重ねて、見事在学中に内定を得られた方もいらっしゃいます。
早期から活動するにはどうするか。最大のポイントは3年生までに取れる単位は取っておくことです。就活は学生にとって究極のマルチタスクですので、4年生になったらなるべく多くの時間を就活に使えるようにしておくことが大事です。
就活のポイント② 親御様の介入について
近年の就職活動は、一般枠にしろ障害者枠にしろ情報戦です。一般枠の場合は、マイナビやリクナビをはじめとする大量の情報サイトから、通過の可能性が高い企業を探すこと自体が最大の困難です。多くの学生は、知っている企業に応募をしたがるので、大企業に1社応募して、不通過で心が折れて就活をストップしてしまう、などということもあります。障害者枠の場合は、そもそも情報が世の中に出回っておりません。発達障害の学生を積極的に採用したい企業情報は、Kaien/ガクプロの場合は内部情報として蓄積・更新しておりますが、学生が単独でそういった情報を得るのは、現状は難しいでしょう。
親御様に知っておいていただきたいことは、就活というとつい面接や書類ばかりに目が向きがちですが、実は「企業選び」やそれにともなう自己分析、「ESを期日通りに出す」といったところでまず困難が生じているということです。優先順位付けが苦手な彼らは、情報の海にのまれそうになり、そもそも応募に至らない、応募数を確保できない状況があります。
ガクプロのようなところに通って、細かくナビゲーションされながら受けていければ良いですが、そうでなければ誰かが具体的に、粒度細かく行動を指示していくことが必要です。まずは学生自身がキャリアセンターに通えるように、親御様が道筋をつけて差し上げると良いでしょう。また、文房具や交通費の援助、書類締め切りの予定管理、説明会や面接当日の身だしなみチェックなど、トレーナー的にサポートをすることで、ご本人が就活に向かうことができます。「大学生にもなって」と思われるかもしれませんが、学生自身が就活に集中するためのサポートはプラスです。
ただし、受ける企業に関して親御様が介入しすぎると、うまくいかない傾向があるように感じます。キャリアセンターのように、最新の企業情報をもとに企業選びをするわけではないので、情報が古いまま指示してしまうケースがあります。また、安定性を重んじることは大事ですが、一般枠の公務員や大企業は非常に倍率が高いです。入りやすさもある程度考えることが必要です。
企業選びで一番大事なことは、学生自身にあった社風・職種であることです。しかし、周囲の期待が先行してしまうと、「卒業時に内定がとれなければ人生終わり」というほどに追い詰められてしまうこともあります。あくまでもご本人にあっているかどうか、無理しすぎていないかどうか、という視点で見守っていただければと思います。
就活のポイント③ 自己理解
学生相談の中で、ときたまこんな話を聞きます。「こんな状態じゃ、障害者枠じゃないと決まらない」という声です。話をよく聞くと、一般枠でとんと面接が通過せず、このままでは障害者枠でないと決まらないといった焦りを持っているとのことでした。経験上、その状態のまま障害者枠に切り替えたとしてもうまくいきません。いくつか理由はありますが、一番の理由は「自己理解が進んでいない、できていない状態だと一般枠でも障害者枠でも決まりにくい」ということが挙げられます。
先ほどの学生のケースで説明すると、彼の場合はそもそも大学で受けたペーパーの職業適性検査を信じすぎてしまっている傾向がありました。したがって、まず企業選びを見直す必要があります。また、面接で何を言うかに意識が取られすぎてしまい、肝心の表情や話を聞く所作の部分でまだまだ改善の余地がありました。また、自己PRもご本人のキャラクターとは異なっており、つまり自己理解ができていないということなのです。
では、自己理解を進めるためにはどうすればいいか。大事なのは経験から学ぶことです。ガクプロでは、プログラムに職業訓練をそろえています。その最大の目的は、経験を通してご自身の強み・弱みを感じてもらうことです。また、自分だけで強み・弱みを整理することは難しいので、その点を第三者であるガクプロがフィードバックしていくようにしています。
先述の彼は、その後自分の弱みにも向き合いながら、内定を取ることができました。内定が取れた秘訣は「自分の強み、弱みを理解し、強みを活かし弱みに対策を取ったこと」だそうです。
なお、余談ですが大事なことを付け加えておくと「一般枠と障害者枠は手段であり、上下ではない」です。それぞれにメリット・デメリットがあるので、「一般枠/障害者枠だから」という思い込みはもったいないです。
より良い支援のために「発達障害学生白書」調査にご協力ください
以上、3つのポイントに絞ってまとめましたが、もちろん当てはまらないことも多くあると思います。ガクプロでも、もっと発達障害のある学生の支援を充実させたい、発達障害のある学生の就職支援はどうすればうまくいくのかを明らかにしたいという思いで「発達障害学生白書」の作成をしています。ぜひ、アンケートにご協力いただけますと幸いです。
- 発達障害のある/発達障害の傾向のある大学生・専門学校生 (発達障害の診断がなくても、その傾向があればアンケートにお答えいただけます。また、既卒中退1年以内の方もお答えいただけます。)
- 発達障害のある/発達障害傾向のある学生のご家族 (お子様に発達障害の診断がなくても、その傾向があればアンケートにお答えいただけます。)
- 大学教員、職員の皆様 (大学名の入力は必須ではありません)
*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます