進学でも就職でもなく「職業訓練」を選ぶ ~発達障害のある人の進路選択~

Kaienマンスリーレポート2017年1月
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Kaien秋葉原の鈴木です。

当社の就労移行支援利用者の就職実績と、発達障害*のある人の就職トレンドを毎月お伝えしている「Kaienマンスリーレポート」。今回は1月のデータを基にお話ししていきます。

1月の就職者数は16名、ハローワークとの密な連携が功を奏す

1月の就職者数は6拠点合わせて16名でした。昨年1月の実績11名より大きくアップしています。内訳を見ていくとKaien秋葉原サテライト事業所から8名の就職者が出たことが目立ちました。

秋葉原サテライトでは①「こしょこしょあきはばら」という古本を扱うAmazonストアを仕入れ・配送・入金管理まで全て運営するプログラムや、②訓練プログラム内で”設立”した疑似特例子会社「Kaienハート」のオフィスサポート部1課で清掃業務を行うプログラム、③アンケート結果のデータ入力など実際に企業で行われている業務を想定した事務補助業務を行うプログラムを行っています。当社の他の事業所に比べると軽作業を体験できるプログラムが充実しているのが特徴です。

軽作業系の求人は当社も紹介していますが、当社就労移行支援6拠点で常時150人ほど訓練生が在籍しており、限られた募集人数だとKaien内でも他の訓練生と選考で競う必要が出てきてしまうのが実際のところです。そこでKaien求人だけではなかなか就職に結びつかない訓練生の情報をこまめにハローワークと連携しながら共有し、この人にはこの求人はどうかとピンポイントで紹介してもらうという地道な作戦を展開したことで、これだけの結果につなげることができたと聞いています。このようなノウハウも事業所内だけにとどめず社内でどんどん共有し、さらに発達障害のある人の就活支援力をアップさせていきたいと思います。

発達障害のある高校生が就活する際の支援体制は不十分

1月の就職者の中に、当社の小中高生向け放課後等デイサービス「TEENS」を利用し、高校卒業後すぐに当社の就労移行支援を利用された方がいらっしゃいました。実は高校卒業後に職業訓練をすぐに受ける方は当社の就労移行支援では少なめです。学力が一定以上ある場合は大学や専門学校に進学するのが一般的ですし、高卒で新卒で就職しようとする場合は、例えば永福学園のような高等特別支援学校で在学中から職業教育を受けて就労準備性を高めていくケースが多いです。職業教育を行っていない普通高校などに通っているが、進学するつもりはなく卒業後は就職したい発達障害のお子さんは首都圏では割合は少なめ。このため大学・専門学校卒業後の就活と同様に、本人の発達障害の特性を踏まえた就職指導を受けることが難しいという問題があります。

卒業してから手厚い支援を受けながら就活する選択もあります

高校卒業してから職業訓練を受けるメリットとしては、大卒の場合も同じなのですが、まずは学業自体がうまくいっていない人は、在学中は単位を取ることに集中したほうが良い場合が多く、きちんと卒業を確定してから就活に専念できることがまず挙げられます。また高校新卒の就活は基本的に高校を通じて求人情報を得るのが一般的と聞いていますが、特別支援学校でない限り障害者枠の求人情報を得ることはできないでしょうし、一般枠だとしても自分の特性にあった業務や職場環境なのかを高校の進路指導担当の先生に相談するのもなかなか難しいのではと思います。卒業して職業訓練でしっかりアセスメントしてもらった上で、発達障害に詳しいスタッフに相談しながら就活方針を決めたり、発達障害に理解のある企業の求人を選定できるというのも大きな利点でしょう。

一般就労か、福祉就労か見極める

高校卒業後の進路の場合に限らずですが、当社の就労移行支援を選ばれるメリットとして「職場でのマナーや生活リズムなどの就労準備性を高める」ことや「本人に合った職種・作業を見つける」こと、「自分で自分の特性を知り弱みをカバーする工夫を見つける」ことの他に、「一般就労ができるかどうか見極める」ことができることが挙げられます。就労移行支援は一般企業への就労を目指している方向けのサービスですが、別の側面から見ると一般就労できるかどうかをアセスメントして、本人が今後どのように働いていくのが望ましいかを提案する機能も持ち合わせています。

就労移行支援からは一般就労される方もいますし、障害福祉サービスである就労継続支援の事業所で働く選択をする方もいらっしゃいます。ご本人が活き活きと働くことができることが何より大切ですので、親御さんとご本人との三者面談も適宜行いながら、納得感や満足感の高い就労ができるようサポートしています。

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*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます