今年もこの季節がやってきました。当社に登録する方に行うウェブアンケート「就業実態調査」です。
過去の記事「就業実態調査」 – 発達障害の方のための就職応援企業 (kaien-lab.com)
今年は約600人の方に調査に参加いただきました。
- 導入「人生の満足度 福祉につながっている人 vs. つながっていない人」←今回
- 其の壱「障害受容のタイミング」
- 其の弐「就労移行支援 Before/After」
- 其の参「発達障害の人の就業実態(平均年収は236万円)」
- 其の四「一般雇用だがオープンにしている人が増加中!?」
- 其の五「就労移行・生活訓練 Kaien利用者データ 2020年版」
600人分の集計は、私が休みに入る12/30と31を中心に行います。それなりに分析に時間がかかります。わかった結果は年末に(場合によっては年始にかけて)ブログで発表していこうと思っています。ちなみに合わせて、社会的価値という当社が社会にどれだけ貢献しているかという数値発表も行います。
2019年社会的価値リポート 累計13億5,552万円(創業~2019年末)に – コーポレートサイト : 株式会社Kaien (kaien-lab.com)
厄年ゆえ?悲しみに震えて…
実はアンケートの設計で失敗したことに今になって気づき、それら特設質問で得られたであろう分析が不十分にしか得られませんでした。具体的には…
- 親と一緒に住んでいるかなど住まいの話
- 診断を職場に告知しているかの話
- 診断からどの程度で、自身の特性を受け止められたかの話
の3つです。
例年通り、給与水準や、職種、契約状況(正社員か否か)などは問題なく分析できると思いますが、年ごとに変わる設問で失敗をやらかしてしまったことが今さっきわかりました。悲しみで震えています。
単純ミスも判断ミスも今年多かった気がしますが、最後まで苦しんだなぁという印象です。幸運にも今年で厄年が終わるらしいので、来年は少しはまともな仕事が出来るのでしょう。期待したいです。
障害受容までの年数は?
さて、分析結果はまた後日にはなりますが、さくっと簡易操作で得られるグラフでいくつかご紹介したいと思います。
一つ目は診断から受け止めまでの期間です。よく「うちの子は障害特性を受け入れていなくて…」と聞くので、数年単位はあるのかなぁと思っていましたが…
思いのほか短く、診断前からが19%、診断前後が37%、診断半年が11%と、ここまでで三分の二に達しています。
一方でまだできていない、10年かかったという人は、合わせて10%、数年以上かかった人は15%と、四人に一人は2年以上はかかっていることがわかりました。二極化しているといってよいのでしょうか?
それにしても、このグラフは就労移行支援に通っている(通っていた)人のみのグラフ。なので『障害福祉サービス』に通っていながらもまだ受け止めが難しいということとなります。
少し不思議に感じますが、生まれてから多少の苦労もありながらも進んできた人生の途中で急に障害と言われたら、「まだ受け止められない」というのが自然な感想なのかもしれません。
人生の満足度 福祉につながっている人 vs. つながっていない人
昨年もご紹介しましたが、今年も調査した幸福度。
無業失業にある就労移行支援利用者のほうが、働いている人の登録が多い当社転職サイト(マイナーリーグ)利用者よりも、幸福度が高いという結果です。
もちろん年齢層や支援者がいる安心感みたいなのが結果に影響している面もあると思います。が、今の日本の福祉制度自体が、余裕がある人が使いやすく、余裕がない人は使いづらい(あるいは制度自体を知らない)ということが多分にある気がします。
例えば就労移行や生活訓練を利用する場合、その期間の生活費は支給されません。つまり親のサポートがない限りは、生活保護に頼る(そしてそのためには心理的な負担もそうですが、手続き上や条件上のハードルが高くある)以外は経済的に通いづらい制度です。
少しサポートを受ければ違う道に行けるかもしれない人が福祉などの行政サービスを諦めることにつながっているとも思えます。それが社会にとって生産的なものになっているようには見えません。語弊を恐れずに言うと、ケチってサービスを作っているので、余計将来にわたる社会的な負荷が増えている印象です。
もっとシンプルな制度にして誰にでも受けやすくしてもらえないのか…。こういう結果を見るといつも思います。
文責: 鈴木慶太 ㈱Kaien代表取締役
長男の診断を機に発達障害*に特化した就労支援企業Kaienを2009年に起業。放課後等デイサービス TEENS、大学生向けの就活サークル ガクプロ、就労移行支援 Kaien の立ち上げを通じて、これまで1,000人以上の発達障害の人たちの就職支援に現場で携わる。日本精神神経学会・日本LD学会等への登壇や『月刊精神科』、『臨床心理学』、『労働の科学』等の専門誌への寄稿多数。文科省の第1・2回障害のある学生の修学支援に関する検討会委員。著書に『親子で理解する発達障害 進学・就労準備のススメ』(河出書房新社)、『発達障害の子のためのハローワーク』(合同出版)、『知ってラクになる! 発達障害の悩みにこたえる本』(大和書房)。東京大学経済学部卒・ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院修了(MBA)。星槎大学共生科学部 特任教授 。 代表メッセージ ・ メディア掲載歴
*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます