内定おめでとうシリーズ④「発達障害者の就活。苦しいときの4つの勧め」~スタッフとの信頼関係~

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Kaienの西河です。内定おめでとうシリーズ第4弾は、SLの訓練生・塚原さんにお話をうかがいました。

塚原さん(20代、男性)
大学3年の時に体調を崩して休学したのをきっかけに、発達障害*と診断される。大学在学中と卒業後もしばらく続けていたアルバイトでは、ストレスにより職場で倒れたことから、一般枠で働くのは難しいかもしれないと考え、昨年7月からKaienで障害者枠での就労も視野に入れて訓練を始める。4月1日から、IT企業の人事部の事務職として、障害者枠で就職。

まずは内定おめでとうございます。率直なお気持ちをお聞かせください。

就職が決まって嬉しいです。ホッとした気持ちがあります。一方で、新しい職場や新しい環境の中で、うまくやっていけるかなという不安もあります。でもやはり自分なりにその会社のために力を尽くしていこうと思っています。

塚原さんの自己紹介をお願いします。

私は2014年9月に大学を卒業しました。小学生の頃は学校の課題でつまずくことがありました。大学3年の時には友人関係、学業でつまずき、体調を崩して一度休学しました。その時、自分で調べた結果、アスペルガーではないかという疑問を抱き、大学の学生相談室でカウンセリングや知能検査などを受けて、やはり発達障害である疑いが濃いと言われたんです。その後、紹介された精神科のドクターから、広汎性発達障害と診断されました。診断を受けてショックを感じる人もいるといいますが、僕の場合はむしろ納得がいったというか、ホッとしたんです。今まで自分が生きにくかったことに、理由があったんだと。

大学から接客のアルバイトを始め、卒業後も就職が決まらず継続していたのですが、仕事上のプレッシャーもかなり強くなったことで、接客での対応やマルチタスクが行えなくなり、一度職場で倒れてしまいました。このとき、一般枠で働くことは、自分は難しいのかもしれないと思いました。そこで、大学時から知っていたKaienで訓練を受け就職したいと思い、昨年の7月から始めて、今に至ります。

Kaienの訓練の中で印象的だったことを教えてください。

週替業務という、疑似職場での人事・経理系のPCを使用した一般的な事務作業をずっとやらせていただいていたんですが、ある時、Excelで関数を使って勤怠の時間を集計するというフォーマットを作りました。それがとても高く評価され、上司役の方々から褒められたことがありました。それまで仕事の中で評価されることがほとんどなかったので、とても嬉しかったです。訓練以外ですと、昨年の末頃に家族と喧嘩をして、とても気持ちが落ち込んだ時期がありました。そういう時に、キャリアカウンセリングの担当のスタッフの方がとても親身になって、色々話を聞いてくださり、就活・生活・医療などをサポートしていただいきました。そのことが、非常にありがたく、今でも印象に残っています。

先ほどお話の中でありましたが、しんどい時期があったと思います。そうした状態からどのように回復されましたか?

4つの方法を取ってきました。1つ目は悪化してる人間関係を整理する、場合によっては距離を置くことです。僕の場合、ちょっと母とうまくいかないところがありました。一緒に食事を取っていたのを一時的にやめて、外で自分だけ食事を食べて帰るなどして、環境を整理しました。2つ目は、良好な交友関係を築いて、それを保ちました。大学時代の友達に久しぶりに連絡をとって、愚痴を聞いてもらいました。趣味のことやこまごましたことから重要なことまで、色々話を聞いてもらい、とても支えになりました。3つ目が医療に関することです。大学の頃は、大学から紹介された医師やカウンセラーにかかっていたのですが、卒業後は、その医師から紹介された、別の地元の病院に通っていました。いい先生だったのですが、あまり親身には話を聞いてくれず、信頼関係が築けずにいました。そのことで悩んでいた所、Kaienの担当の方から、別のクリニックの先生と、カウンセリング先を紹介していただきました。新しいドクターとカウンセラーの方とは、本当に良い関係を築くことができました。自分に合った医療機関、医師やカウンセラーを見つけるのは、自分のベースを作る上でもとても大切だと思います。最後の4つ目は、安定して訓練に参加することだと思います。一時期、訓練が全然手につかなくなってしまった時期もありました。それでも何とか努力して安定して訓練に参加できたので、それが自分のペース、生活のリズムを作る上で大事だったと実感しています。なのでKaienとのつながりを保つことや、訓練の上で勤怠の安定を図ることは、結構大切なのではないかと思います。

塚原さん愛用のウォークマン。移動中に好きな音楽を聴き、気持ちのバランスを取る

就職活動では何が一番大変でしたか?

正直に申しますと、履歴書の書き方や面接の時の振る舞い、マナーを覚えるのは、何から何まで全部、本当に大変でした。一番大変だったのは面接で、もともと対人のコミュニケーションが苦手なところがあり、最初のうちは緊張しっぱなしでした。訓練を開始して早いうちからハローワーク合同面接会で何回も面接を受け、選考が進む上で面接を受ける回数も増えていきました。次第に場慣れして、最後の方には、今日は何を聞かれるんだろうと楽しむ気持ちも少し出てきていました。

Kaienを利用する前と利用した後で、ご自身の変化があれば教えてください。

Kaienに入る前は、まだ学生気分で、就職のことも全然考えていませんでした。学生目線というか、物事の捉え方も幼いところがありました。訓練を通じて、社会人としての振る舞いやものの考え方というのが徐々に身についてきて、不思議なことに、そのうちにKaienでの訓練や就活以外の、プライベートのこともうまくいくようになっていき、人間的にも少し成長できたのかなと思います。

今後の仕事についての期待と、後輩に対するメッセージをお願いします。

仕事に関しては、会社の中で、何を身に付けられるかがカギになると思っています。まずはできることから始めて、社会人としての生活に慣れて、ゆくゆくは「あの人にならこの仕事を任せられるな」と、周囲から思ってもらえる信頼されるような人材になっていければこの上ないです。

後輩の方々へのアドバイスは、なるべく安定して訓練を続けるということが、大事だと思います。社会人として第一に求められるのが勤怠の安定なので。でもしんどかったら無理せずに、担当の方やスタッフに相談することをお勧めします。僕自身も一時期訓練を中断した時期がありました。その間柔軟に対応していただき、お休みを頂いている中でも1週間に1度現在の状況(治療の進捗・就活状況)を聞いていただき、スタッフの方にアドバイスを頂いていました。訓練の中でも外でもいろんなことがあると思います。あまり焦らずにくじけずに努力すれば、結果は出ると思います。ぜひKaienで頑張っていってください。

*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます