厚生労働省リーフレットより |
就労移行支援事業所Kaien新宿の鈴木です。
私が担当している修了生に、現在障害者トライアル雇用で日々業務に励んでいる方がいます。一般枠でもトライアル雇用という制度がありますが、こちらはその障害者枠版になります。今回は障害者トライアル雇用がどんなシステムか、発達障害のある求職者がこの制度を利用するメリットはどんなことかについてお話しします。
企業は発達障害のある人にどうやって働いてもらえるかイメージしづらい?
障害者雇用を進める上で企業側のハードルになるのが「障害への理解と対応」です。企業は選考の際に応募者にどんなスキルや経験があるか、どんな業務を任せられそうかを書類や面接の中で確認しています。障害者枠ではそこに「どんな障害を持っているか」「業務でどんな困難があるか」「職場でどのような対応・配慮をする必要があるか」ということも加わります。身体障害や知的障害、精神障害と障害の種類によってそれぞれ業務での困り感も変わりますし、対応・配慮方法も変わります。特に発達障害はひとりひとり特性にバラエティがあり、対応も個人によって力点を変えていく必要も出てきます。障害者雇用の経験があまりない企業は「この応募者にどんな業務を任せ、どんな対応をしていけば安定して継続して働いてもらえるか」というイメージが持ちづらく、採用を躊躇してしまう可能性もあります。
厚生労働省リーフレットより |
実際に職場で働いてもらうことで企業が長期雇用へのイメージをしやすくなる
障害者トライアル雇用は、原則3か月間障害のある方に企業で働いてもらい、その職場でどんな風に働くことができるか、また困ることがあるとすればどんなことかをご本人も企業も実際に確認することができる制度です。トライアル期間終了時に引き続きこの職場で働いてもらいたいと企業が判断すれば、継続雇用契約に移行することができます。この期間にうまく働くことができるようになるかが肝心なので、ご本人が利用しているKaienのような就労移行支援事業所や、障害者就労支援センター等が訪問して勤務の様子を確認したり、障害者職業センター等のジョブコーチが入ってご本人が働きやすくなるように業務指示の仕方や業務の進め方などをアドバイスしたりと外部からの支援が入ることもあります。資料によると約8割の方が継続雇用に移行しているそうです。この「お試し雇用」の期間がワンクッション入ることで、安心して企業も採用することができているのではと想像できます。
「普段の自分」で働き続けることができるか確認できる
発達障害のある方は、未知のものや未来の出来事を想像するのが苦手な特性があります。求人票に掲載されている職種や仕事内容には概要しか書かれていないので、その情報だけでは実際に自分にできるかどうかがイメージできず、たくさんある求人の中からどこに応募したらよいかわからないという方も多くいらっしゃいます。そういう方には実習を選考過程に組み込んでいる求人をお勧めしています。実際の職場で働いてみることで求人への理解や意欲が高まることが多くとても有効なのですが、たいてい実習は数日間、長くて2週間程度のことが多く、ご本人が「無理をしてがんばって」しまえば困り感の強い方も問題なく終わってしまうこともあり得ます。発達障害のある方は業務内外でのコミュニケーションが苦手な方が多いのですが、すごく意識して振る舞うようにすると周囲は気にならない程度になる場合もあるためです。またご本人もこのくらいの無理なら続けていけると思いこんでしまう可能性もあります。職業訓練でもそうなのですが、たいていスタートしてから1、2か月すると緊張感が解けてきて、普段のご本人の行動特性が見えやすくなってきます。長期間安定して働けるかどうかを確認するには3か月程度様子を見るのが理想的です。そういう意味では困り感の強い方ほど障害者トライアル雇用の制度は利用価値があると思います。
障害者トライアル雇用は企業と応募者の「婚約期間」?
かなり強引ですが、採用を「結婚」に例えると、書類選考や面接が「お見合い」で、「お互いをあまり知らないまま結婚するのはハードルが高いので、まずは婚約期間をつくって、同棲して一緒に生活しながらお互いのことをよく知り、今後の結婚生活を準備・イメージする」のがこの障害者トライアル雇用ではと思います。トントン拍子で面接が進み就職してみたけれど、実際の職場は入社前のイメージとは違っていて、ギクシャクしながら働くことになるといったケースも残念ながらいくつか耳にします。このようなギャップ解消ができるような制度は企業にとっても求職者にとてもありがたいと思います。
私の担当している修了生も、指示された業務はしっかり行えているし、働きたいという気持ちもとても伝わってきていますよと企業さんから評価をいただいていますが、一方で業務コミュニケーションで今後改善していくべき点もありますねとのフィードバックもいただいています。継続雇用をしていただけるように、トライアル雇用期間の終わりまでに強みをさらにアピールして弱みをカバーしていけるよう日々がんばっていらっしゃいます。ご本人は実際に働いてみてこちらの職場で働きたいと意欲がさらに増したということでした。是非その思いが実ると良いなと思っていますし、そのためのフォローも続けていきます。
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