こんにちは。就労移行支援事業所Kaien池袋の湊です。
私たちスタッフは、障害者手帳を持った人たちが安定的に働いていくために、どういった配慮を頂くことが出来るのか、どういったスキルが必要とされるのか、日々研究しています。その一環として、今回は、日総工産株式会社の特例子会社である「日総ぴゅあ株式会社」の見学をさせていただきましたので、その報告をしたいと思います。
特例子会社とは、安定的な障害者の雇用を図るため、働きやすい配慮のある環境を整えた企業の子会社を指します。2013年に障害者の法定雇用率が民間企業は2.0%にあがり、50人以上従業員がいる企業は1人以上採用することが必要になっています。特に大きな企業は、特例子会社で採用されている方を、親会社の実雇用率に算定し、法定雇用率を達成しています。2014年5月末時点で全国の特例子会社の数は391社あり、訓練生の多くが就職する東京都には120社、神奈川県には48社、埼玉県には20社程あります。(厚生労働省HPより)Kaienの就労支援を受けている方々で、自分の特性にあった配慮のある環境を求めて、特例子会社を選ばれる方も多くいらっしゃいます。
就労移行支援Kaienのスタッフ、講師とTEENSのスタッフが参加しました。 |
頼もしい従業員
日総ぴゅあ株式会社に就労されている方の多くは、知的障害の療育手帳をお持ちの方々です。
一番印象的だったのが、お仕事されているみなさんが、自分の仕事にプライドと自信を持ってお仕事されていることです。何名かの従業員の方にお仕事内容を説明いただきましたが、本当に目がキラキラしていて頼もしく感じられました。
プライドを持って働ける工夫
その理由はモチベーションを維持する仕組みがあること、適材適所で仕事ができる仕組みがあること、補助器具などを使って精度高く仕事を行える仕組みがあること、周囲の人に「助かる」と言ってもらえる環境づくりをされていることなど、様々な工夫や仕組み作りによるものなのだと思います。また、個別の対応として、時間を読むことが苦手な方には砂時計を使う、文字を読むことが苦手な方には写真付きのマニュアルを用意する、綺麗に紙を折ることが苦手な方には補助具を用意するなど、上手に働くための合理的な配慮がされる環境づくりも随所に感じられました。こちらの写真のハーブティーもそういった補助具を使って、決まった量のハーブを入れて作ることが出来るそうです。また、保護者向けの会社説明会があるのも、親御さんからすると安心する材料の一つになりそうですね。
日総ぴゅあで従業員の方が作っているハーブティーをいただきました。 |
素直・真摯・謙虚が大切
一方で、評価されたことにより、「自分は仕事ができる」との認識が大きくなりすぎてしまって、周囲の人に対する態度が横柄になってしまったり、周囲の指摘や指導を素直に受け取ったりすることが難しくなってしまった方には、かなり注意がされた事例などもお聞きしました。業務のスキルより仕事をする真摯な姿勢や素直さはどの職場に行っても重要視されることなのだと改めて感じました。さらに、毎日元気に出勤できることが何よりも大切だということを企業担当者の方もおっしゃっており、実習や面談の時もその点を気にされているようでした。
今回の企業は知的障害を抱えている方の多い職場でしたが、適材適所・合理的配慮と学ばせていただく点で、アスペルガー・広汎性発達障害・ADHD(注意欠如多動症)・LD(学習障害*)などの様々な診断を受ける方に向けた支援の考え方として大変参考になりました。今回、見学をさせていただきました。日総ぴゅあ株式会社の皆様、貴重なお時間をありがとうございました。
*学習障害は現在、DSM-5では限局性学習症/Specific Learning Disability、ICD-11では発達性学習症/Developmental Learning Disorderと言われます