適応障害やうつ病で休職する際は、会社への連絡と手続きが必要です。心身が弱っている中、会社へ連絡したり手続きをしたりするのに負担を感じる方もいるのではないでしょうか。
本記事は、休職するまでの流れや、休職する際の連絡のポイント、メールの例文、復職までの流れ、活用できる支援機関を解説します。本記事を読むと休職に関して必要な知識がまとめて分かるため、ぜひご一読ください。
適応障害やうつ病で休職する時の流れ
適応障害やうつ病で休職する時の流れは、大きく分けて以下の3ステップです。
- 精神科や心療内科で診断を受ける
- 医師に診断書を記載してもらい提出する
- 休職期間や過ごし方を会社と話し合い休職する
休職手続きについては、就業規則(就業規程)や社内ルールに書かれていることが多いため確認しておくとよいでしょう。
それでは、各ステップについて詳しく解説します。
精神科や心療内科で診断を受ける
適応障害やうつ病により、休職が必要だと考えた際には、まずは精神科や心療内科などの専門医を受診し、診断を受ける必要があります。病名や症状が分かっている場合でも、休職するべき状態であるのか、主治医に現在の状況を判断してもらう必要があるからです。
また、診断を受けていない場合は、適応障害やうつ病であるのか、専門的に調べてもらう必要があります。場合によっては、発達障害*や自律神経失調症など、別の原因があるかもしれません。新たに医療機関を探す場合には、職場のメンタルヘルスに詳しく、自宅から通院しやすい場所にある病院、クリニックを探すとよいでしょう。
受診する際は、「休職を希望するので診断書を書いてもらいたい」と伝えたうえで、現在の症状や職場の状況を伝えます。
医師に診断書を記載してもらい提出する
医師の診断の結果、休職の必要性が認められたら、診断書を書いてもらいます。診断書には、病名、現在の症状、休職が必要な期間、医師の意見などが記載されます。
受け取った際に、診断書の内容に誤りがないか、また、就業規則や社内ルールに沿った形式になっているか確認しておくと安心です。会社によっては、診断書の記載内容に指定があり、医師の診断を休職申請書などに直接記載してもらう決まりになっている場合もあります。不明点があれば、人事担当者に相談しておきましょう。
診断から診断書発行までの期間は、即日発行される場合もありますが、数日~数週間程度かかる場合もあります。スケジュールに余裕を持っておくとよいでしょう。
休職期間や過ごし方を会社と話し合い休職する
会社に診断書を提出し、休職申請が受理されると、正式に休職が開始されます。ただし、休職条件の希望がそのまま通るとは限らず、事前に本人と会社側で話し合いが行われるのが一般的です。
話し合いでは、主に以下の内容を決めます。
- 休職の開始日と終了予定日
- 休職中の連絡方法(報告の頻度や方法、連絡先、など)
- 給与、社会保険、手当について
- 復職準備について(職場復帰プログラム、業務内容の変更、など)
これらの内容を話し合い、条件を確認しておくと、安心して休職しやすくなります。
適応障害やうつ病で休職する際の伝え方のポイント
適応障害やうつ病で休職する際の連絡方法としては、以下の3つがあります。
- 直接伝える
- 電話で伝える
- メールで伝える
休職願いは重要な連絡であるため、対面、電話、メールの順に、正式な連絡とみなされる傾向にあります。
なお、従業員のプライバシー保護の観点から、連絡方法が定められている会社もあります。就業規則や社内ルールを確認しておきましょう。
直接伝える場合の伝え方のポイント
休職は重大な内容ですので、可能であれば対面での連絡が望ましいといえます。突然の報告は上司も驚いてしまうため、事前に「相談したいことがある」と伝え、落ち着いて話せる時間を確保しましょう。
適応障害やうつ病の場合、上司との人間関係が悪い場合や、職場で話すのがつらい場合もあるかもしれません。なるべく症状が落ち着いているタイミングを選ぶのも、冷静に状況を伝えるために大切です。1対1だと心理的な負担が大きい場合、人事担当者や産業医など他の人も交えて面談する方法もあります。
また対面の連絡では、緊張して伝えたいことを忘れたり、感情的になったりしてしまいがちです。事前に要点をメモしておき、客観的な事実を中心に話しましょう。
電話で伝える場合の伝え方のポイント
電話での連絡では、「お時間よろしいでしょうか?」と確認するのがマナーです。また、朝の始業直後や会議が多い時間帯など、上司が忙しい時間帯は避け、落ち着いて話せる時間を選びましょう。
電話では「休職したい」と結論を冒頭で簡潔に述べるようにします。そのうえで、病院を受診した結果、休職が必要と認められたなど、休職を決断するに至った経緯を順を追って伝えると、上司が理解しやすくなります。
また、電話は記録に残らないため、同様の内容のメールを送るのもよい方法です。細かな点についての誤解や、「言った・言わない」の問題が生じにくくなります。
メールで伝える場合の伝え方のポイント
適応障害やうつ病の影響により、直接話したり電話で伝えたりするのが難しい時は、メールで伝えるのも選択肢の一つです。ただし、メールのみで休職願いを伝えるのは、一般的にマナー違反とされています。そのため、メール冒頭で、メールでの連絡になる理由を簡潔に伝え、お詫びしておくと安心です。
休職の連絡メールでは、正確な連絡が最重要です。メールタイトルには、「【重要】休職のご相談」「適応障害による休職について」など、目的が一目でわかるようにします。
メール本文では、結論ファーストで要点をしっかり伝えましょう。1段落3行程度を目安に、休職したい旨、診断結果、希望の休職期間などを明確に書きます。箇条書きや空白行も必要に応じて使いながら、簡潔に内容を伝えましょう。
適応障害やうつ病を理由に休職する時のメールの例文3選
ここからは、メールで連絡する際の例文を、上司に休職を申し出る際、休職を正式に申請する際、休職開始の連絡と業務引き継ぎの際に分けて紹介します。
いずれのメールにおいても、基本構成は以下のとおりです。
- 冒頭の挨拶とお詫び
- 要件の説明
- 休職に関する具体的な内容
- 会社側への依頼事項
- 結びの言葉
それでは、具体的な例文を紹介します。
上司に休職を申し出る際のメールの例文
休職を希望する場合は、まずは上司に相談する必要があります。以下に例文を紹介します。
【メール例文】
件名:休職のご相談について
〇〇様(上司の名前)
お世話になっております。〇〇(自分の名前)です。
突然のご連絡となり申し訳ありません。
最近、体調不良が続いており、〇月〇日に医療機関を受診したところ、「適応障害(またはうつ病)」と診断されました。医師からは一定期間の休養が必要と指示を受けております。
つきましては、休職についてご相談させていただきたく、ご都合の良いお時間をいただけますでしょうか。
また、休職にあたって必要な手続きや診断書の提出について、ご指示をいただければと思います。
お手数をおかけし恐縮ですが、何卒よろしくお願いいたします。
〇〇(自分の名前)
上司に相談する場合は、お伺いを立てる表現を使うのがポイントです。「休職させていただきます」のように決定事項として伝えると、かえって話し合いがこじれる可能性があります。
3-2:休職を正式に申請する際のメールの例文
休職の相談後、正式に申請する際のメールは、できるだけ簡潔に連絡事項を伝えることが重要です。
【メール例文】
件名:休職申請のお願い
〇〇部 〇〇課
〇〇様 (上司や人事部、総務部などの担当者を記入)
お世話になっております。〇〇部〇〇課 〇〇(自分の名前)です。
先日ご相談させていただきました件について、医師より一定期間の休養が必要との診断を受けたため、正式に休職を申請いたします。
休職期間は〇月〇日から〇月〇日までの予定です。診断書は別途提出いたします。
休職に関する手続きや、必要な書類についてご指示をいただければ幸いです。
また、業務の引き継ぎについても、ご相談できればと思います。
ご迷惑をおかけいたしますが、何卒よろしくお願い申し上げます。
〇〇(自分の名前
正式な申請については、提出先や連絡方法が就業規則で定められている場合があります。送信前に今一度確認しておきましょう。
休職開始の連絡と業務引き継ぎのためのメールの例文
休職が決まった後、関係者に業務の引き継ぎを伝えるメールを送ったほうがよい場合もあります。一例を以下に示します。
【メール例文】
件名:休職のご連絡と業務引き継ぎについて
関係者各位
お世話になっております。〇〇です。
このたび、医師の診断により、〇月〇日から〇月〇日まで休職させていただくこととなりました。関係者の皆様にはご迷惑をおかけし、大変申し訳ありません。
現在担当している業務については、以下の通り引き継ぎを進めております。
・A業務:〇〇さん(進捗状況や今後の対応について記載)
・B業務:〇〇さん(対応時の注意点などを記載)
〇月〇日までは対応可能ですので、ご不明点がありましたらお気軽にご連絡ください。なお、休職中の連絡については〇〇さんにご相談いただければ幸いです。
皆様にはご迷惑をおかけしますが、ご理解のほどよろしくお願い申し上げます。
〇〇(自分の名前)
このメールは、詳細な引継ぎの連絡というより、関係者各位に直接連絡をする点がポイントです。連絡によって心証がよくなり、同僚の負担も軽減できるため、復職した際に協力関係を構築しやすくなります。
休職の連絡やお詫び、引き継ぎのポイントなどを簡潔にまとめ、詳細な内容は担当者ごとにやり取りします。
適応障害やうつ病での休職から復職する際にメールで伝えても良い?
復職を希望する旨をメールで連絡してよいかは、事前の取り決めによって異なります。特別な理由がない限り、休職前に指定された連絡手段を使うのが原則です。
したがって、復職の連絡をメールで行うと決まっていれば、メールによる連絡でも問題ありません。
一方、連絡手段にメールが指定されていない場合、人事部や総務部などの該当部署のメールアドレスが分からない場合もあるでしょう。この場合は、電話で連絡し、詳しい内容はメールで送りたいと伝えるなど、状況に合わせた対応が求められます。
ただし、適応障害やうつ病について知られたくない場合は、連絡する相手と手段は慎重に選んでください。
適応障害やうつ病での休職から復職するまでの流れ
適応障害やうつ病での休職から復職するまでの基本的な流れは以下のとおりです。全体の流れを把握しておくと、メールや電話の連絡タイミングも分かります。
手順 | 内容 | |
1 | 休職開始 | ・休養、治療を開始 |
2 | 休職中 | ・会社の指定の連絡手段で定期報告 |
3 | 復職願いの連絡 | ・復職できる状況になったら、主治医の診断を受け、就業意見書をもらう・指定の連絡手段を用い、復職したい旨の連絡と就業意見書を指定の連絡手段で送る |
4 | 職場復帰の判断とプランの作成(会社側) | ・会社と産業医が復帰の可否を判断・復帰可能であれば職場復帰支援プランが作成される |
5 | 職場復帰の決定 | ・会社と本人で復職日を決定し、復職の準備を進める・復職条件や業務内容の調整が必要な場合、事前に相談する ※この段階で、新たな連絡手段が作られる場合がある(指定の連絡手段→上司に直接メールなど) |
6 | 復職 | ・産業医や上司、人事担当者と定期的に面談を行い、体調を確認しながら働く・必要に応じて追加の支援を受ける |
復職願いを連絡した後は、会社側から都度連絡があるので、指示に従って連絡、手続きを進めてください。
適応障害やうつ病での休職から復職する際に利用できる支援サービス
復職を考えられるようになったとしても、健康であった時の状態に戻っていない場合が少なくありません。このような時は、負担を軽くしながら、復職準備を進める方法があります。
そこで、復職する際に活用できる支援機関を紹介します。
リワーク
リワーク支援は、休職した方の職場復帰をスムーズにし、安定して働き続けることを目的としたプログラムです。大まかな流れと実施内容は次のとおりです。
プログラム | 具体例 |
1.復職前の準備 | ・本人、職場、主治医との復職プランの合意形成・生活リズムの改善支援・不安や緊張の対処法を学ぶ訓練など |
2.復職直後のサポート | ・段階的な出勤、業務の支援・面談、カウンセリングによる支援 |
3.業務への適応支援 | ・勤務条件の見直し支援・ストレスマネジメントの実践 |
これらのプログラムによって、休職していた方も、仕事に復帰し、長く仕事を続けやすくなります。
リワーク支援は、障害者職業センター、病院の精神科やメンタルクリニック、企業のリワークプログラムで提供されています。
障害者就業・生活支援センター
障害者就業・生活支援センターは、障害のある方の職業生活の自立を支援するために、国が各自治体に設置している機関です。就業面と生活面の一体的な相談と支援を受けられる点が特徴です。
適応障害やうつ病の方が利用できるサポートとしては以下が挙げられます。
- 職場復帰、職場の配慮についての相談
- 生活リズムの整え方、通勤の準備についての相談
- 企業や職場との連携役になってもらう
- 就労移行支援事業所やリワークなど、他の支援機関の紹介
利用対象者は、障害のある方ですが、障害者手帳がなくても利用できるケースもあります。
就労移行支援
就労移行支援は、一般企業での就職を目指す障害のある方を支援する福祉サービスです。しかし、休職中の方でも、他の支援機関の利用が困難な場合や、主治医が必要と判断した場合などの条件を満たすと利用できます。
サービス内容は各事業所によって異なりますが、精神障害や発達障害に特化した就労移行支援事業所の「Kaien」では、復職を目指す方に以下のようなサポートを提供しています。
支援項目 | 具体例 |
カウンセリング | ・復職に関する相談・モチベーション、生活リズムの管理・服薬管理、通院同行 |
職業訓練 | ・プログラミングや事務など、多数の実践的な職業訓練 |
定着支援 | ・就労後3年半の企業訪問、面談・独自SNS、コミュニティへの参加 |
就労移行支援は生活、職業スキルを身に付けたい方や、定着支援を受けたい方などにおすすめの支援機関です。障害のある方が対象ですが、障害者手帳は必ずしも必要ありません。
自立訓練(生活訓練)
自立訓練(生活訓練)は、日常生活を安定させ、仕事や社会参加の基盤をつくるための福祉サービスです。障害のある方が自立した生活を送るために必要なスキルを身に付けることを目的としています。
先ほど紹介したKaienでは、自立訓練(生活訓練)も行っています。主な支援内容は以下のとおりです。
支援項目 | 具体例 |
ソーシャルスキルの訓練 | ・生活リズムの整え方・金銭管理、家事のスキル向上・感情コントロールの方法を習得・コミュニケーションスキルの習得 |
マイ・プロジェクトの支援 | ・生活リズム改善や自立のための短期プロジェクトを実施・復職に向けた準備を支援 |
カウンセリング | ・体調管理や優先順位のつけ方・自己理解の深掘り・復職に向けたアドバイス |
自立訓練(生活訓練)は、例えば「仕事に就きたいものの、適応障害で交通機関を利用できなくなったため、まずは復職準備ができる状態になりたい」というような場合に利用できます。
就職移行支援との併用はできませんが、復職準備ができる段階になってから、利用する方法も可能です。
適応障害やうつ病による休職から復職する際は支援サービスの利用も検討してみて
適応障害の症状が重い場合は、十分な休養が必要です。無理を重ねてしまうと悪化するリスクがあるため、休職も検討するとよいでしょう。休職を選ぶ際は、連絡手段や伝え方のポイントを知っておくと、スムーズに手続きが進みます。
Kaienでは、復職の際に活用できる就職移行支援と、自立訓練(生活訓練)の福祉サービスを提供しています。
就職移行支援は、カウンセリングや実践的な職業訓練と、手厚い定着支援によって、スムーズな復職につなげられるサービスです。また、自立訓練(生活訓練)は、復職の前準備として、生活スキルやソーシャルスキルを学ぶ際に活用できるサービスです。
負担を軽くしながら、新たな職業生活をスタートするためにご活用ください。
*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます。