就労移行支援とは、障害のある方のための職業訓練・就活支援・定着支援を行う障害福祉サービスです。社会福祉法人やNPO法人、民間企業が運営する就労移行支援事業所において、一般就業(一般の労働者と同じように企業と雇用関係を結んで働くこと)を実現するための支援を受けられます。
この就労移行支援と混同しやすいのが、就労継続支援(A型・B型)というサービスです。就労移行支援と就労継続支援A型・B型は、支援の目的や内容、工賃の有無などさまざまな違いがあるため、利用する際には支援内容を理解しておく必要があります。
そこで本記事では、就労移行支援と就労継続支援A型・B型の支援内容や対象者、利用の際の注意点について詳しく解説します。2025年に新たに導入予定の就労選択支援や、就労移行支援と就労継続支援の同時利用の可否についても触れていますので、ぜひ最後までお読みください。
就労移行支援の全体像については下記記事で紹介していますので、あわせてご覧ください。就労移行支援とは?受けられる支援や利用方法をわかりやすく解説
就労移行支援と就労継続支援A型・B型の違いとは
まずは、就労移行支援と就労継続支援A型・B型の違いをおおまかに押さえておきましょう。以下に各支援の概容を一覧表でまとめていますので参考にしてください。
就労移行支援 | 就労継続支援A型 | 就労継続支援B型 | |
目的 | 職業訓練・就労支援 | 就労機会の提供 | |
サービス内容 | ・職業訓練・就活支援・定着支援 | ・就労機会の提供 ・職業指導 ・生活支援 ・一般就労への移行支援 | ・就労機会の提供 ・職業指導 ・生活支援 ・一般就労、A型への移行支援 |
対象者 | 一般就労が可能な人 | 一般就労がむずかしい人 | 年齢・体力の関係で一般就労や雇用契約のある就労がむずかしい人 |
年齢制限 | 18歳以上65歳未満 | 18歳以上65歳未満 | なし |
利用期間 | 2年間 | 無制限 | |
就労先 | 企業 | 就労継続支援事業所 | |
雇用契約 | あり | あり | なし |
工賃(賃金) | なし | あり | |
平均月収(2022年時点) | – | 8万3,551円 | 1万7,031円 |
利用料 | 世帯収入による(9割の人は無料で利用している) |
次項からは、就労移行支援と就労継続支援の違いを詳しく解説していきます。
就労移行支援とは
ここでは就労移行支援の対象内容やサービス内容、利用料、利用期間、工賃について説明します。就労移行支援の全体像を理解できれば、就労継続支援との比較をしやすくなるでしょう。
対象者
就労移行支援の対象者は以下のすべての条件を満たす方です。
- 18歳以上65歳未満
- 身体障害、知的障害、精神障害、難病のある方
- 一般就労を目指しており、かつ職業訓練・就活支援などによって一般就労が可能になると見込まれる方
たとえば、現在失業中または働いたことのない発達障害*の方やうつ病の方などは、こちらの就労移行支援を受けられます。障害者手帳がなくても、医師の診断書や意見書などを提出すれば申請可能です。
支援内容
就労移行支援は、「職業訓練~就活支援~定着支援」という一貫した支援を受けられるのが特徴です。それぞれの支援内容を以下に示します。
内容 | 具体例 |
職業訓練 | 職業訓練、講義、職場体験実習など |
就活支援 | 求人選定、選考フォローなど |
定着支援 | 職場訪問、オフ会、懇親会など |
なお、就労移行支援は基本的に、就労移行支援事業所に定期的に自分で通う「通所」方式となっています。ただし、定着支援サービスでは、就業先にスタッフが出向く場合もあります。
利用料金
9割以上の方は無料(0円)で支援を受けています。しかし、世帯収入が一定以上あると、おおむね1日500円~1,200円の料金がかかることに注意が必要です。ただし、世帯収入に応じて月単位で負担上限があり、これを超えた分は無料となります。
世帯(本人+配偶者)の収入状況 | 負担上限月額 | 収入の目安 |
生活保護受給世帯市町村民税非課税世帯 | 0円 | ・給与収入の場合おおむね年収100万円以下 ・障害者は給与収入の場合おおむね年収200万円以下 |
市町村民税課税世帯(所得割16万円未満) | 9,300円 | 年収がおおむね600万円以下 |
上記以外 | 3万7,200円 | 年収がおおむね600万円を超える |
入所施設利用者(20歳以上)や、グループホーム・ケアホームの利用者は、市町村民税課税世帯の場合、負担上限月額は3万7,200円です。
なお、通所のために交通費がかかる場合があります。一部の自治体は交通費を補助しているので、問い合わせてみるとよいでしょう。
就労継続支援A型とは
就労継続支援A型とは、障害の特性などにより一般企業への雇用が困難なものの、雇用契約に基づいて働くことが可能な方に働く機会や就労に必要なスキル、知識を提供する場です。
一般企業への就労支援を行う就労移行支援と異なり、就労継続支援A型は就労継続支援事業所と雇用契約を結び福祉的サポートを受けながら就業でき、働いた分の工賃が得られます。
就労継続支援A型を利用した後に一般就労を目指す際には、就労移行支援への移行も可能です。
以下で就労継続支援A型の対象者や支援内容、工賃を詳しく見ていきましょう。
対象者
就労継続支援A型を受ける条件は次のとおりです。
- 18歳以上65歳未満
- 身体障害、知的障害、精神障害、難病のある方
- 一般就業はむずかしいが、適切な支援によって就労継続支援事業所における雇用契約の就労が可能な方
一般就業がむずかしいとは、就労移行支援を受けたものの雇用に結びつかなかった場合を指します。また、特別支援学校を卒業して就職活動をしたけれども企業等の雇用に結びつかなかった場合や、就業していたが失業した場合なども、A型支援を受けられる可能性がある対象者です。
支援内容
就労継続支援A型の主なサービスは以下のとおりです。
就労機会の提供 | ・雇用契約に基づく就労の機会(就労継続支援事業に通所)を提供 |
職業指導 | ・生産活動の実施指導 ・職場規律の指導、など |
生活支援 | ・健康管理の指導 ・相談支援、など |
一般就労への移行支援 | 一般就労に移行するためのサポート ※A型支援によって、一般就労に必要な知識や能力を獲得した方に限られる |
サービスの活用イメージとしては、「一般就労は負担が大きいので事業所で支援を受けながら働きたい」「実務で報酬を得ながら就労スキルを高めたうえで一般就労にチャレンジしたい」といったケースが考えられます。
工賃
就労継続支援A型の2022年の平均賃金は以下のとおりです。
平均工賃(賃金) | 施設数 | |
月額 | 時間額 | 4196 |
8万3,551円 | 947円 |
就労継続支援A型は雇用契約があるため、最低賃金が保証されます。たとえば、東京都の事業所であれば、東京都の最低賃金は1,163円(2024年10月時点)が適用されるのです。このこともあって、就労継続支援A型はB型より工賃が総じて高くなっています。
なお、2024年4月1日に施行された報酬改定により、事業の収益で工賃を支払えない場合に報酬の大幅引き下げが行われました。この報酬改定により、就労移行継続支援A型の継続が難しく、大量解雇せざるを得ない事業所も増えています。解雇となった就労移行支援A型の利用者は、一般就労を目指すか、他のA型施設を探すか、もしくはB型に移行せざるを得ないなどの問題が生じています。
就労継続支援B型とは
就労継続支援B型とは、障害や年齢、体力面などにより就労が困難な方に、働く機会や就労に必要な知識、スキルを提供する場です。就労継続支援B型は、雇用契約を結ばないため最低賃金は保証されませんが、月数万円程度の作業工賃が得られます。
就労移行支援A型と比較すると工賃は大幅に下がりますが、年齢制限がなく利用者のペースで働きやすい環境にあります。ここからは、就労継続支援B型の対象者や支援内容、工賃を詳しく見ていきましょう。
対象者
就労継続支援B型の対象者は、身体障害、知的障害、精神障害、難病があり、以下の条件を満たす方です。
- 企業などや就労継続支援事業(A型)での就労経験があるが、年齢や体力の面で雇用がむずかしくなった方
- 50歳以上の人または障害基礎年金1級受給者
- 1、2以外の人で、工賃をともなう就労ができると認められる方
就労継続支援B型は、就業移行支援やA型の支援を受けたものの雇用に至らなかった方、雇用関係のある就業がむずかしい方が利用する支援です。年齢制限がないため、65歳超の高齢者でも支援を受けられます。
支援内容
就労継続支援B型の主なサービス内容は以下のとおりです。
就労機会の提供 | 工賃をともなう就労機会の提供 |
職業指導 | ・生産活動の実施指導 ・職場規律の指導、など |
生活支援 | ・健康管理の指導 ・相談支援、など |
一般就労・A型への移行支援 | 一般就労やA型に移行するためのサポート ※B型支援によって、一般就労やA型に必要な知識や能力を獲得した方に限られる |
活用イメージとしては、「年齢・体力の関係で一般就労やA型就業がむずかしくなったので、B型を利用したい」「無理のない範囲で仕事を続けたい」といったケースが多いといえます。
工賃
就労継続支援B型の2024年の平均工賃は以下のとおりです。
平均工賃(賃金) | 施設数 | |
月額 | 時間額 | 1万5354 |
1万7,031円 | 243円 |
就労継続支援B型は雇用契約がないため、最低賃金が保証されません。したがって、就労継続支援B型はA型より工賃が安い傾向があります。
また、就労継続支援B型はA型よりも、勤務日数・勤務時間を柔軟に決められます。たとえば「心身の負担が大きいので週1日・1時間程度で働く」といったことも可能です。こうした状況も工賃の差につながっていると推測されます。
就労継続支援B型も、A型と同様に2024年4月1日に報酬改定が施行されました。主な改定内容は、月額の工賃を向上させるための報酬体系の見直し、手厚い支援を行うための人員配置の見直しなどです。なお、報酬改定により就労継続支援A型の運営継続が厳しくなっている背景から、今後はA型に通っていた方がB型へ流れるなど、就労継続支援B型の利用者の増加が予想されます。
ただし、利用者の興味を引く内容で勧誘しても実際にはそれらに該当する支援がなかったり、事前に伝えられていた工賃より低かったりするトラブルも増えてきているため、事業所の見極めが重要です。
就労選択支援の導入
障害のある方で働く意欲がある場合に、利用できる就労福祉サービスには就労移行支援や就労継続支援などがありますが、2025年10月には新たに「就労選択支援」の導入が予定されています。
就労選択支援とは、障害のある方の能力や意欲、適性などを見定めたうえで、適切な支援サービスを選べるようサポートするものです。これまでは、就労支援を選ぶ際に問い合わせや事業所の見学などを障害があるご本人やそのご家族が行う必要があり、「実際に通ってみたけれど自分には合わなかった」などのミスマッチが生じていました。
このような事態を未然に防ぎ、適切な就労支援を受けられるようにするため、2025年10月以降は就労継続支援B型は就労選択支援を利用し就労支援を受けることが原則となります(就労継続支援A型は2027年4月以降)。前項で挙げた悪質な事業所の見極めなど、事業者選びの一助としても期待されている制度です。
就労移行支援と就労継続支援は同時に利用できる?
就労移行支援と就労継続支援の同時利用は原則不可となっています。
就労継続支援を利用し、就労経験を積んだりスキルを身につけたりした後に就労移行支援へ移行することは可能です。また、就労移行支援を利用したけれど一般就労が難しかった場合に、もう少し支援を受けながら働いたり、必要な知識を学んだりするために就労継続支援へ移行することもできます。
Kaienの支援サービス
Kaienでは、就労移行支援や自立訓練(生活訓練)を実施しています。就労移行支援では、100種以上の職業訓練から就職活動、定着支援まで一貫したサポートが受けられます。自分に合う職種が分からない方も、求人の探し方や働き続けられるかが不安な方も、専門の担当スタッフがしっかりサポートしますので、ぜひお気軽にご相談ください。
また、就労前の生活基盤を作りたい方、他者とのコミュニケーションスキルや障害の理解を深めるなど、必要なスキルを身につけてから就労を考えたい方には自立訓練(生活訓練)がおすすめです。講座や実践プロジェクト、カウンセリングを通じて自立に向けた支援を行います。
いずれも無料で見学会や体験利用を行っていますので、お気軽にご連絡ください。
就労移行支援の利用についてお悩みの方はKaienにご相談ください
障害のある方は就労移行支援や就労継続支援A型・B型の利用を検討できます。目的やサービス内容がそれぞれ異なるため、違いを知ったうえで自分に合った支援を活用していきましょう。
しかしながら、障害の程度や就労への適応度などを、自分で客観的に判断するのはむずかしいものです。困ったときは地域の障害福祉課や保健センター、就労支援をしている民間企業などに相談するとよいでしょう。
発達障害を抱えながら一般企業や事業所への就労を目指しているなら、Kaienにお任せください。Kaienは、発達障害の方の強みや個性を踏まえた就労移行支援を得意としています。
「仕事が長続きしない」「まだ働いたことがなくて働くイメージが持てない…」「自分の障害特性を見つめたい」といった課題・悩みをお持ちの方は、ぜひお気軽にお問合せください。
*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます
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