ご自身が愛着に関連する問題を抱えているのか、それともADHD(注意欠如多動症)なのか、判断がつかずに悩んでいる方もいるかもしれません。両者の背景や原因、対処法には理論的な違いがあるため、正確に分けられそうですが実際にはそうでもありません。愛着に関連する問題とADHDは、行動面での特徴が一部重なりますし、両者併存という可能性もあります。
この記事では、愛着に関連する問題とADHDの基本的な知識と相違点について解説します。また、治療者を選ぶ際の視点についても触れますので、ぜひ最後までお読みください。
愛着に関連する問題とADHDの基本知識
愛着に関連する問題とADHDとはどのようなものか、基本的な内容を説明します。
愛着に関連する問題とは
愛着に関連する問題は、乳幼児期に養育者(主に母親や父親)との安定した愛着関係が形成されなかった場合に生じる可能性がある状態を指します。この状態は、情緒の調整や対人関係に影響を及ぼすことがあります。
幼少期に養育者との離別、ネグレクト、虐待などの経験があると、愛着形成が阻害されることがあり、その結果、自尊心や社会性、自己調整能力の発達に課題が生じることがあります。これにより、他者とのコミュニケーションが困難になったり、自己肯定感が低く生きづらさを感じたりすることがあります。
精神医学的には、「愛着障害」という単一の診断名は存在せず、DSM-5では「反応性アタッチメント障害(Reactive Attachment Disorder)」と「脱抑制型対人交流障害(Disinhibited Social Engagement Disorder)」の2つが定義されています。
反応性アタッチメント障害
他者に対して過剰に警戒し、感情を表に出すことが難しい状態です。養育者からの慰めを受け入れにくい、恐怖心や孤立感が強いといった特徴があります。
脱抑制型対人交流障害
見知らぬ人に対しても過度に馴れ馴れしく、境界感覚が乏しい状態です。初対面でも躊躇なく近づく、過剰なボディタッチが見られるなどの特徴があります。
ADHDとは
ADHD(注意欠如多動症)は、不注意、多動性、衝動性を主な特徴とする神経発達症です。脳の前頭前皮質や基底核の機能変化が関与しており、生まれつきの神経生物学的要因が背景にあるとされています。
また、ADHDの特性は個人差が大きく、症状の重さは軽度から重度まで幅広く、幼少期に明らかになる場合もあれば、青年期や成人期になって初めて気づかれる場合もあります。
特に、大人になって仕事や人間関係が複雑化すると、対処が難しくなり、症状が顕在化することがあるのです。
愛着に関連する問題とADHDの類似点と違い
愛着に関連する問題とADHDには、行動面での類似点がありますが、その原因や現れ方には違いがあります。
類似点の例
- 多動(落ち着きがない行動)
- ルールや約束を守るのが難しい
違いの詳細
多動
愛着に関連する問題では、不安や怒りなどの感情が引き起こす一時的な落ち着きのなさとして現れることが多いです。感情が落ち着けば行動も収まる傾向があります。一方、ADHDの多動は、神経生物学的な基盤に基づく持続的な特徴であり、感情の状態に依存せず一貫して見られることが多いです。
ルールが守れない
愛着に関連する問題では、他者への不信感や感情的な混乱が背景にあることがあります。ADHDでは、衝動性や注意力の欠如がルール遵守を妨げます。
愛着に関連する問題とADHDの併発の可能性
愛着に関連する問題とADHDが同時に存在する場合があることが、指摘されています。一定の率でADHD特性を持った子どもが誕生するため、愛着の問題とは独立して存在していても不思議なことは無いはずです。
ADHD特性があると、それによる育児の困難さにつながり、親が適切な対応をすることができないことがあります。また、生活の中でいじめやストレスに直面することがあり、それらが二次的な影響として愛着に関連する問題を引き起こす可能性もあるとの見方があります。親が発達障害を持ち、親自身の困難さから子育てに影響を及ぼし、子どもに愛着の問題が生じるケースも考えられます。いずれにしても、ADHDと愛着障害は併発の可能性もあるわけです。
愛着の問題やADHDで迷った時の治療者・支援者の選び方
どちらか分からない場合、幅広い視点で対応してくれる治療者や支援者を選ぶのが賢明です。
愛着に関連する問題とADHDの鑑別は、専門家でも難しいといえます。先天的なADHDと後天的な愛着の問題が絡み合うケースや、両方が併存する可能性もあります。豊富な知識と経験を持ち、生きづらさの原因を多角的に探ってくれる治療者や支援者を選び、診断や支援を仰ぐようにしましょう。
監修者コメント
愛着障害ですが、実は診断されることは滅多にありません。DSM-5では愛着障害として、反応性愛着障害と脱抑制型対人交流障害が当てられていますが、いずれも被虐待者の中でもごく少数が生ずる障害という位置づけです。昨今、愛着障害は随分拡大されて大人で自認傾向が強い印象を持ちます。今現在の生きづらさの背景に、自分の育った養育環境とそれによってもたらされた「何か」の説明に愛着障害がぴったりくると感じることは理解できます。ただ、それがその人の今と未来の問題を解決するかは別問題です。また、ADHDの方で併発している方がいるのは記事の通りです。愛着の問題で精神科/心療内科にかかるのであれば、何をすると今の生きづらさを解消する手立てになりうるのか、是非未来を見て効果的な方策を医師や心理士と共に考えてみることをお勧めします。

監修 : 松澤 大輔 (医師)
2000年千葉大学医学部卒業。2015年より新津田沼メンタルクリニックにて発達特性外来設立。
2018年より発達障害の方へのカウンセリング、地域支援者と医療者をつなぐ役割を担う目的にて株式会社ライデック設立。
2023年より千葉大子どものこころの発達教育研究センター客員教授。
現在主に発達障害の診断と治療、地域連携に力を入れている。
精神保健指定医、日本精神神経学会専門医、医学博士。