字が汚いのは障害が関係している?書字障害の特徴や診断について解説

公開: 2025.3.21更新: 2025.3.21

「字が汚い」と指摘され続け、自分なりに練習しても上達しないと悩んだことはありませんか?もしかすると、それは努力不足ではなく、書字障害などの発達特性が影響しているのかもしれません。

本記事では、字がうまく書けない原因として考えられる障害や書字障害の特徴、診断の流れなどを解説します。日常生活や仕事で困りごとを減らす工夫や、困ったときの相談先についても紹介しているので、字を書くことに悩んでいる方はぜひ参考にしてください。

字が汚いことに関係する障害とは?原因として考えられること

字が汚いことに関連する障害として、書字障害(ディスグラフィア)やADHD(注意欠如多動症)が挙げられます。

書字障害は、「文字を書くことが苦手」という特性が現れる学習障害*¹(LD)の一種です。代表的な症状には、「言葉や文字を理解していても、正しく書くのが難しい」「文字のバランスが取れず、形が崩れてしまう」「似た形の文字を書き分けられない」「鏡文字を書いてしまう」などが挙げられます。

また、ADHDの方も、文字を書くことが苦手な場合があります。ADHDは、「集中し続けるのが難しい」「じっとしているのが苦手」といった特性がある発達障害*²です。文字を書いている途中でバランスを崩したり、指先の細かい動きを調整するのが難しかったりするケースがあるため、字が乱れて読みづらい文字になってしまう方も少なくありません。

その他には、そもそも眼に問題があるケースもあり、字が汚い理由にはさまざまな原因が考えられます。

ADHDについては、以下の記事で詳しく紹介しているので、ぜひ併せて参考にしてください。

大人のADHD(注意欠如多動症)とは?向いている仕事や困りごとへの対処法

書字障害の特徴

書字障害の特徴の現れ方は人それぞれですが、よく見られる傾向として次のようなものがあります。

  • 言葉や意味は理解できるのに、文字を正しく書けない
  • 文字の書き順を覚えるのが難しい
  • 文字のバランスが崩れ、「字が汚い」と言われる
  • 形の似ている文字を書き分けられない
  • 鏡文字を書いてしまう
  • 文法を覚えるのが苦手
  • 長い文章を書くのが難しい
  • 漢字だけでなく、ひらがなや数字も書きづらい
  • ノートのマスや罫線から文字がはみ出してしまう

このような特性により、学生時代には「文字を書くのに時間がかかり、板書をノートに写す前に消されてしまう」「国語の点数が悪くなりやすい」といった困難を抱える方が少なくありません。

また、社会に出てからも「説明をメモに取れない」「書類を手書きする仕事が苦手」「字が読みにくく、メモや手紙の内容を誤解される」といった悩みを持つ方が多く見られます。

書字障害の原因とパターン

書字障害の原因にはさまざまな要素が関係しており、特性の現れ方も人それぞれです。ここでは、書字障害の主な原因やパターンについて解説します。

文字の形や位置が認識しづらい

文字を構成するパーツの形や位置関係、大きさを正しく認識する視覚認知力が弱いと、文字を正しく書くのが難しくなります。特に日本語は複雑な形の漢字が多く使われるため、漢字の学習が始まる小学校から困難を感じ始めるケースが少なくありません。

特に、「漢字は読めるが、書くのが苦手」といった場合、視覚認知力の問題が関係している可能性があります。

文字と音との対応が理解しづらい

「か」という文字を「ka」と発音するように、文字と音を結びつけて理解する力を「音韻処理力」といいます。この力が弱いと聞いた言葉を正しく文字に変換できず、メモを取る際に時間がかかったり、書き間違えたりするケースが多く見られます。

また、音のまとまりを認識しづらいため、単語の区切りを間違えたり、正しい順番で書くのが難しかったりする方もいます。特に、聞いた情報を素早く書き取る必要がある場面では、苦労やストレスを感じる方が多いでしょう。

手先をコントロールするのが難しい

身体の複数の部位を連携させて動かすことを「協調運動」といいます。鉛筆やペンを使って文字を書くには、指先の細かな動きと目からの情報を適切に連携させなければなりません。このような協調運動が苦手だと、「字がノートのマスからはみ出してしまう」「文字のバランスが崩れる」といった書字の困難につながりやすくなるのです。

また、発達障害の方の中には、運動や動作のぎこちなさ、不器用さを特徴とする「発達性協調運動障害(DCD)」が見られるケースがあります。これにより、字を書くことやお箸を使うといった細かい動作が苦手な方も少なくありません。

書字障害の診断

書字障害が疑われる場合は自己判断せず、医療機関の受診を検討してみてください。適切な診断を受けることで、自身の特性を理解し、必要な支援や対策を検討しやすくなります。

診断の際には、「書字障害の症状がいつから現れたのか」「現在、どのような場面で困難を感じているか」などの聞き取りが行われます。さらに、知的発達の偏りや認知特性を調べる心理検査を実施し、文字の読み書きに関する能力を詳しく評価するのが一般的です。

診断基準には、アメリカ精神医学会が作成した「DSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル)」が用いられます。問診や心理検査の結果をもとにDSM-5の基準と照らし合わせ、医師が総合的に書字障害であるかどうかを診断するという流れです。

書字障害は治療できる?

書字障害を含む発達障害は病気ではないため、根本的に治療する方法はありません。しかし、自分の得意・不得意を把握して環境を工夫すれば、日常の困りごとを減らすことは可能です。

書字障害の症状や影響の程度は人それぞれ異なるため、医師や専門家の指導を受けながら、自分に合った対策を検討しましょう。無理に克服しようとするよりも、苦手な場面を減らす工夫をしたり、補助ツールを活用したりすると、「文字を書くこと」に対する負担を軽減できます。

書字障害の人に向いている仕事や働き方はある?

書字障害の方には、文字を書く機会が少ない仕事が向いています。例えば、大工や電気工事などの現場作業、食品や機械部品を扱う工場の作業員などは、業務の大半が手作業で進められるため、書字障害は問題になりにくいでしょう。

また、手書きの書類作成が不要で、パソコンを活用できる職場も適しています。データ入力やプログラミング、デザイン、動画編集などの仕事は、基本的にキーボードや専用ソフトを使用するため、手書きの機会はほとんどありません。

近年はほとんどの業界で業務のデジタル化が進み、手書きで対応しなければならない場面は減ってきています。そのため、書字障害があっても問題なく働ける環境が増えており、自分に合った職場を見つけやすくなっています。

書字障害の相談先

書字障害は発達障害の一種であり、相談できる機関や支援制度が用意されています。ここでは、書字障害の方が利用できる主な相談先を紹介するので、ぜひチェックしてみてください。

発達障害者支援センター

発達障害者支援センターは、発達障害のある方に向けた総合的な支援を提供する専門機関です。書字障害も発達障害の一種であるため、「文字を書くのが苦手」「字が読みにくいと言われる」といった悩みがある場合は、相談を検討してみてはいかがでしょうか。

必要に応じて、医療・福祉・教育・就労支援などの関係機関と連携し、本人や家族に対して適切な助言や指導を行います。また、書字障害だけでなく、学習やコミュニケーション、日常生活の困りごとなどについても幅広く対応してもらえるため、気軽に相談してみてください。

障害者就業・生活支援センター

障害者就業・生活支援センターは、障害のある方の就労支援と生活支援を一体的に行う機関です。利用者には就業支援担当と生活支援担当がそれぞれ付き、仕事や日常生活の困りごとについて相談できます。

書字障害があり、「どのような仕事が向いているかわからない」「職場で書字に関する配慮を受けたい」といった悩みがある場合、適切なアドバイスやサポートを受けることが可能です。例えば、「生活基盤を整えながら無理なく就労を目指したい」という方は、相談してみましょう。

ハローワーク

全国のハローワークには障害者向けの相談窓口が設置されており、専門知識を持つスタッフが個別に対応しています。利用者の特性を考慮し、適した職場を紹介してもらえるのが特徴です。

書字障害がある方には、手書き業務が不要な職場の紹介や、事業主に対する求人条件の調整などの支援が受けられます。仕事探しの際に、どのような配慮が必要かを詳しく相談できるため、安心して求職活動を進められるのがメリットです。

就労移行支援

就労移行支援は、障害のある方が一般企業への就職を目指す際に利用できる支援制度です。利用者の特性や状況に応じて個別支援計画を作成し、それぞれのペースで就労を目指せるのが特徴です。「どのような仕事が向いているのかわからない」「働くために必要なスキルを身につけたい」といった悩みを持つ方は、ぜひ活用してみてください。

具体的には、適性や課題の把握、就職に必要なスキルやマナーの習得、履歴書作成や面接対策、職場見学や実習など、実践的な支援が受けられます。書字障害の特性に応じたサポートも受けられるため、手書き業務の少ない職種の選定やITツールの活用など、個々の特性に合わせた働き方を見つけることが可能です。

さらに、就職後の職場定着支援も行っており、働き始めた後の困りごとや職場でのコミュニケーションの不安などについても相談できます。そのため、長く安定して働ける職場を探している方にもおすすめです。

自立訓練(生活訓練)

自立訓練(生活訓練)は、障害のある方が自立した日常生活を送るためのサポートを受けられる制度です。お金や体調の管理、家事のスキル習得など、日常生活を安定させるための訓練を受けられるのが特徴です。

また、パソコンスキルやビジネスマナーの習得など、就労に向けたプログラムも用意されています。そのため、「すぐに就職するのは難しいが、まずは生活の安定を優先したい」「働く前に社会生活に慣れる練習をしたい」と考えている方にも適した支援制度です。

この制度を利用した後に就労移行支援へ移行するケースも多く、段階的に就職を目指せます。自立に向けた不安がある方は、こうした支援を活用しながら自分のペースで生活の土台を整えていくとよいでしょう。

特性を理解した上で工夫を行うことで困りごとは減らすことができる

書字障害がある方でも、自身の特性を理解して環境を工夫することで困りごとを軽減できます。「文字を書く機会の少ない仕事を選ぶ」「デジタルツールを活用する」など、具体的な対策を検討してみてください。

支援機関に相談すると、より自分に合った働き方を見つけやすくなるため、積極的に活用しましょう。Kaienでは、発達障害の強みを活かした就労移行支援や自立訓練(生活訓練)を提供しています。IT業界出身のスタッフが多く在籍し、書字が不要なIT関連のスキル習得や就職先の紹介も可能です。

無料の見学会や説明会を随時開催しているため、興味のある方はぜひ参加してみてください。

*1学習障害は現在、DSM-5では限局性学習症/Specific Learning Disability、ICD-11では発達性学習症/Developmental Learning Disorderと言われます。

*2発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます。

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