仕事上で悪気がないのに人を怒らせてしまったり、重要なアポイントを忘れてしまったりと、つまずきやミスが多く、「もしかして、発達障害*ではないか?」と考える人もいるでしょう。
この記事では、発達障害とは何か、その特徴や種類について解説します。発達障害の場合、子どもと大人とで特徴の現れ方に違いがあることについても紹介します。発達障害かもしれないと思った時に利用できる相談先についても解説しますので、ぜひ最後まで目を通してみて下さい。
発達障害とは
発達障害とは、脳機能の発達の偏りから来る障害です。脳の働きの違いからコミュニケーションがうまく図れなかったり、一つのことに集中ができなかったりと日常や社会生活においてさまざまな支障を抱えやすいという特性があります。
発達障害と一口にいってもさまざまな種類があり、一人ひとり特性は異なります。脳機能の発達に関係した障害のため、本人が怠けている、あるいは、親のしつけが悪いといったことでは決してありません。
また、子どもの頃は問題にならなかったものの、大人になって社会生活を送る上で、仕事や人間関係で問題がよく起きるようになり、発達障害であることに気付くケースもあります。
発達障害のグレーゾーンとは?
発達障害のグレーゾーンとは、発達障害の特性が見られるものの、発達障害の診断基準には満たないため、発達障害とは確定できない状態をいいます。グレーゾーンとは、正確な診断名ではなく、発達障害だという断定を避けるために使われる通称です。
注意したいのは、グレーゾーンだからといって、生きづらさの度合いが「軽い」とは限らない点です。
もともと発達障害の特性の現れ方は、スペクトラム(連続体・連続した段階)といわれるように、人によって濃淡がさまざまです。発達障害の診断においても絶対的な数値が存在しているわけではありません。
グレーゾーンと診断された場合でも、すべての診断基準を満たしてないだけであって、いくつかの診断基準は満たしており、その症状や特性が軽くない場合もあります。
関連記事:発達障害グレーゾーンとは?特徴や困りごと、対策についても解説
発達障害の種類
発達障害には、主に下記のような種類があります。
- ADHD(注意欠如多動症)
- ASD(自閉スペクトラム症)
- SLD(限局性学習症)
- DCD(発達性協調運動障害)
- チック症
- 吃音
詳しくは次の通りです。
ADHD(注意欠如多動症)
ADHD(注意欠如多動症)とは、注意力が続かずミスをしやすい(不注意)、じっとしていられない(多動・多弁)、よく考えずに行動する(衝動性)といった特徴がある発達障害です。
特性の現れ方でさらに3つのタイプに分かれます。一つは、不注意の傾向が強いタイプで、気が散りやすい、忘れ物をしやすい、段取りが苦手といった特性が見られます。
もう一つは多動・衝動性が強いタイプで、落ち着きがない、待てずに動き回る、感情のコントロールが苦手といった特性が強い傾向です。三つめは、前述の不注意と多動・衝動性といった特性が混在して現れるタイプです。
ADHDは、12歳になる前にその症状が出現するといわれています。年齢が上がるにつれ多動性が弱まるなど、特性の現れ方が変化することも少なくありません。
関連記事:大人のADHD(注意欠如多動症)とは?向いている仕事や困りごとへの対処法
ASD(自閉スペクトラム症)
ASD(自閉スペクトラム症)は、対人関係やコミュニケーションに困難を抱えやすく、特定のことに強いこだわりを持つといった特性のある発達障害です。
言葉や表情、身振り手振りから相手の気持ちを読み取ることができなかったり、自分の伝えたいことをうまく表現できなかったりすることがあります。また、感覚が過敏で、強いこだわりを持ち、独自のやり方やルールに固執するといった特性も見られます。一方で興味関心の幅が狭く、他人に興味を持てない、言葉を額面通りに受け取って冗談が通じないといったことも少なくありません。
これらの特性から、空気の読めない人、失礼な人と捉えられてしまうこともあります。
関連記事:大人のASD(自閉スペクトラム症)とは?症状や特徴、診断基準を解説
SLD(限局性学習症)
SLD(限局性学習症)とは、知能の遅れはないものの、読む・書く・計算するなど特定の学習能力において困難さを抱える発達障害です。
理解力に問題はなく、文字が逆さに見えていたり、数字の順が把握できなかったりと認知能力に凸凹があるために、読めない、書けない、計算できないといった特性が現れます。
子どもの頃は単に勉強が苦手、勉強不足などと見すごされてしまうことも少なくありません。大人になってもメモが取れない、資料やマニュアルを読むのに時間がかかるといったことからSLDに気付くこともあります。
関連記事:大人の限局性学習症(SLD)とは?特徴や診断方法、対処法を解説
DCD(発達性協調運動障害)
DCD(発達性協調運動障害)とは、協調という脳機能の働きに問題があるために、運動や動作にぎこちなさや不器用さが目立つ発達障害のことです。
体育やスポーツが苦手なだけでなく、日常生活において服を着替えたり、靴紐を結んだり、食事をしたりする動作においても不器用さ、困難さを抱えることがよくあります。
協調とは、視覚や聴覚、触覚などを通じて身体の内外から得られる情報をまとめ、本人の意思に沿って身体の動きの正確さやタイミングなどのバランスを取り調整していく脳の機能です。DCDでは、この協調の機能がうまく働かないために、日常生活における動作に支障が見られます。
関連記事:発達障害と運動音痴との関係とは?発達性協調運動障害(DCD)の特徴を解説
チック症
チック症とは、本人の意思とは関係なく突発的・不規則に発声や動作を繰り返す症状のことです。一般的に、運動を制御する脳機能がうまく働かないことが原因で起こると考えられています。
無意識に素早くまばたきをしたり、顔をしかめたりといった運動チックといわれる症状のほか、咳払いしたり、鼻をすすったりといった音声チックといわれる症状が見られます。
一時的な症状として子どもに現れ、その後軽快することが多いといわれるものの、大人になっても症状が持続したり、一度治まった症状が再び出現したりすることも少なくありません。
なお、運動チックと音声チックの両方が慢性化して1年以上続く状態はトゥレット症と呼ばれます。
関連記事:大人のチック症とは?症状や対処法、トゥレット症との違いを解説
吃音
吃音とは、話したい時に言葉がスムーズに出てこない症状が特徴の発達障害です。「あ、あ、あのね」というように最初の音を繰り返したり、「あーのね」と最初の音を伸ばしたり、「‥‥あのね」と最初の音がなかなか発せなかったりします。
吃音症には、「発達性吃音」と「獲得性吃音」があります。「発達性吃音」は原因が明確にはわかっていませんが、子どもの頃に発症しやすく成長とともに解消する傾向にあります。
獲得性吃音は特定の原因で発症する吃音症です。脳卒中などの脳の病気や頭のケガなどが原因となって発症する「獲得性神経原性吃音」と、ストレスやトラウマによって発症する「獲得性心因性吃音」があります。
関連記事:言葉に詰まるのはなぜ?吃音症の特徴や仕事での工夫・対処法について解説
発達障害は併発することも珍しくない
発達障害の種類を紹介しましたが、それぞれの障害を明確に分けて診断することは、実際には難しいとされています。
なぜなら、発達障害は併発することも珍しくなく、障害ごとの特徴が重なり合うことも多いからです。
例えば、ADHD(注意欠如多動症)とASD(自閉スペクトラム症)は、医学上の定義は別であるものの、両者は併発することがあり、専門家でもどちらであるか診断するのは難しいとされています。また、年齢や環境により目立つ発達障害の症状が異なる場合もあるため、診断時期によって診断名が変わることもあります。
発達障害では、診断名にこだわるのでなく、併発したり特徴が重なったりすることがあると理解した上で、どういった傾向がより強いのかを把握するのがよいでしょう。
関連記事:ASDとADHDは併発・併存する?特性の違いや特徴、診断基準について解説
【子ども〜大人まで】主な発達障害のサインや特徴
発達障害の現れ方は、子どもの頃と大人になった場合とでは、異なる場合があります。以下では、ADHD(注意欠如多動症)やASD(自閉スペクトラム症)、SLD(限局性学習症)といった主な発達障害について、子どもと大人でどのようにサインや特徴の現れ方が異なるのか解説します。
ADHDのサインや特徴
ADHDとは、先述の通り、不注意や多動・衝動性を特徴とする発達障害です。
子どものADHDのサインや特徴としては、授業中でも歩き回る、黙っていられなくておしゃべりを続ける、忘れ物やなくし物が多い、気が散りやすいといった傾向が見られます。整理整頓ができない、集中力がなくて宿題を仕上げられない、集団の中で落ち着きのなさが目立つといったことも少なくありません。
大人になってからは、多動や衝動性の程度は落ち着く傾向があるといわれています。一方、不注意さは大人になっても表れやすく、重要な予定や書類を忘れる、計画や準備が苦手、単純ミスが多い、優先順位がわからない、会議に集中できないといった特性が見られます。
ASDのサインや特徴
ASDとは、コミュニケーションに困難を抱えやすく、特定のことに強くこだわる特性のある発達障害です。
子どものASDのサインや特徴としては、言葉の発達が遅い、こだわりが強い、目を合わせない、微笑みかえさない、ほかの子どもに関心がないといった特性が見られます。集団が苦手で一人遊びが多くなる傾向です。電車やアニメなど自分の好きなことには何時間でも没頭する一方で、予定を変更されたり、新しい環境に置かれたりすると不安が強く現れ、変化にすぐに馴染めないことが少なくありません。
大人のASDのサインや特徴は、仕事上の曖昧な指示や複雑な作業が理解できない、言葉通りにしか理解できず相手の真意を推し測れないといったものが挙げられます。空気を読むことが苦手で、場違いな発言をすることも少なくありません。また、想定外の出来事に臨機応変に対応することやマルチタスクも苦手な傾向です。
SLDのサインや特徴
SLDとは、理解力や知能に問題はないものの、読む・書く・計算するなどの特定の能力において困難さを抱える発達障害です。
子どものSLDでは、文字を読むのが遅い、文字の読み飛ばしや読み替えの間違いが多い、文字を左右逆に書く、書く文字がマスの中に収まらない、板書が遅いという特徴が見られます。また、計算においては、数の把握が苦手、繰り上がりや繰り下がりが理解できない、図表やグラフの意味が理解できないといった傾向があります。
大人のSLDでは、文字を読み飛ばす、語尾を読み間違える、音読スピードが遅い、鏡文字などの間違った字を書く、書き写すスピードが極めて遅いといったサインや特徴が見られます。また、計算においては、お金の計算ができない、簡単な数字や数式の記号が理解できない、繰り上げや繰り下げがわからない、時計が読めないといったことも少なくありません。
大人の発達障害の相談先
大人になって「発達障害ではないか?」と悩んでいる場合、下記のような機関に相談できます。
- 医療機関
- 発達障害者支援センター
- 地域障害者職業センター
- 障害者職業・生活支援センター
- ハローワーク
- 就労移行支援
- 自立訓練(生活訓練)
以下でそれぞれ詳しく解説します。
医療機関
発達障害かもしれないと思いながら、まだ、医療機関を受診していない場合は、医療機関を受診してみることがおすすめです。
医療機関に相談することで、自身の症状や特性への理解を深めることができ、症状の改善にもつながります。医療機関の中でも精神科や心療内科で検査や診断を受けられます。外来診療を専門に行う精神科・心療内科であるメンタルクリニックなどでも診断は可能です。
受診前に発達障害専門の医師がいるか、電話やホームページで確認してから受診するとよいでしょう。
発達障害者支援センター
発達障害者支援センターは、発達障害者への総合的な支援を目的とした公的な機関です。全国の都道府県および政令指定都市に設置されています。
発達障害のある人とその家族からの相談について、地域の福祉・医療・労働などの関係機関と連携しながら助言や支援を行ってくれます。日常生活における困りごとの相談や生活スキルに関する相談、就労に関する相談などさまざまな相談が可能です。
地域ごとに支援体制や内容が異なるため、支援内容について事前に問い合わせることがおすすめです。
地域障害者職業センター
地域障害者職業センターは、障害のある人に対し、ハローワークと連携して専門的な職業リハビリテーションを提供する施設です。
就業について相談したい場合には、障害者職業カウンセラーといった専門家に相談することが可能です。相談者のニーズや障害の特性に応じて、職業評価や職業準備訓練などの職業リハビリテーションなどを受けることができます。
職業リハビリテーションで、就労に向けた実作業による訓練や知識習得のための講習を受けることで、基本的な労働習慣が身に付き、コミュニケーション能力の向上なども図れます。
障害者職業・生活支援センター
障害者就業・生活支援センターとは、障害者の身近な地域において、就業面と生活面の両面について一体的に支援を行う公的な機関です。全国に窓口があり、場合によっては家庭訪問や職場訪問などでの相談も可能です。
仕事上の悩みの相談だけでなく、日常や地域生活における悩みの相談もできます。必要に応じて、医療機関や職場などの関係機関と連携してサポートしてもらえたり、福祉サービスの利用方法についての情報提供を受けられたりします。
ハローワーク
ハローワーク(公共職業安定所)は、職業紹介サービスを始めとした総合的雇用サービスを提供する公共機関です。全国に設置されている各ハローワークには障害のある求職者に向けた専門窓口が設置されています。
障害に理解のある専門の相談員に求職や就労の相談ができ、就職支援から求人紹介、職場定着まで一貫したサポートが受けられます。
発達障害で、新たな職場や新たな働き方を検討してみたいという場合に、障害に理解のある専門スタッフが相談に応じアドバイスをしてくれます。
スキルアップのための職業訓練を受けることも可能です。また、一般的な転職エージェントと異なり、障害に理解のある企業の求人を多く紹介してもらえるという利点もあります。
就労移行支援
就労移行支援とは、一般企業などに就職したい障害のある人に対して、就労に必要な知識・スキル向上のための支援を行う障害福祉サービスです。就労前の支援のほか、就労後の職場定着サポートも行っています。
就労移行支援では、全国各地域にある就労移行支援事業所に通って、職業訓練や就職支援を受けることとなります。職業訓練では、ビジネスマナーやPCスキルが学べる実習などさまざまなプログラムの受講が可能です。
専門性の高いスタッフが障害の特性に合わせて支援をしてくれるため、悩みも相談しやすく、自分の適性に合った就職先を探しやすいといえます。
自立訓練(生活訓練)
自立訓練(生活訓練)は、障害のある人が自立した生活を送れるように、さまざまな生活上のスキルの維持・向上に向けた訓練を行う障害福祉サービスです。
就労移行支援と同じ障害福祉サービスですが、就労移行支援が「就職」を目指すのに対し、自立訓練(生活訓練)は生活上の「自立」を目指す点で異なります。自立訓練(生活訓練)は、障害のある人が、家族などの周囲の手助けを得ずに毎日を送れることを目的とします。
自立訓練(生活訓練)では、コミュニケーション力を高める方法や、優先順位をつける方法、感情をコントロールする方法など生活の基礎力を高める講習や訓練が受けられます。
一人ひとりの特性に合わせた対応が重要
発達障害といっても、一人ひとり特性は異なります。特性によって、お困りごとが異なるように、必要な対応も異なります。
まずは自分の特性を知り、特性に合った対応を取ることが大切です。発達障害で、日常生活や社会生活にお悩みの場合は、Kaienにお気軽にご相談下さい。
Kaienでは、発達障害の強みを活かした就労移行支援、自立訓練(生活訓練)、人材紹介サービスを行っています。発達障害や精神障害に理解ある企業200社以上と連携し、他社にないKaienならではの独自の求人紹介をしています。
豊富な経験と実績に基づいたサポートが可能なため、就労移行支援や自立訓練(生活訓練)をご検討の場合には、Kaienまでお気軽にお問い合わせ下さい。
*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます。