適応障害の家族が疲れたらどうしたらいい?接し方のポイントや相談先を解説

2025.2.13

適応障害の家族がいてサポートをするうちに、疲れてしまうこともあるのではないでしょうか。

適応障害の方に接する場合には、「過度に干渉しない」「励まそうとしない」などいくつかのポイントがあります。家族が疲れすぎないように、「できる範囲でサポートをする」ということもポイントの一つです。

この記事では、適応障害の方への接し方のポイントや家族が疲れすぎないためにできること、相談できる支援先について解説しますので、ぜひ参考にして下さい。

適応障害(適応反応症)とは?

適応障害とは、ストレス要因によって日常生活に支障をきたすほどの感情面、行動面の症状が出ることです。症状には、著しい苦痛をともないます。

ストレス要因の内容は、人によってさまざまです。失業といった独立した単一の出来事や、失恋と金銭的な問題など複数の出来事、強い障害のある家族の世話など持続的な出来事などがあります。

適応障害は、現在「適応反応症」といわれています。以前は適応障害といわれており、適応障害という呼称で認識されている方も多いため、本記事では適応障害という表記で説明します。

適応障害の症状の主な例としては、下記のものが挙げられます。

  • 抑うつ気分
  • 不安
  • 焦燥感
  • 怒り
  • 喪失感
  • 意欲の低下
  • 暴飲暴食
  • 暴力的行為

症状は一つでなく複数現れることも少なくありません。

アメリカ精神医学会の診断基準DSM-5によると、適応障害の症状はストレス要因が発生して3ヶ月以内に始まり、要因がなくなれば多くの場合6ヶ月未満に治まるとされています。

うつ病と症状は似ていますが、適応障害は、ストレス要因から離れると症状が治まる点でうつ病と異なります。

家族が適応障害になった場合の接し方のポイント

家族が適応障害になった場合、どのように接すればよいか悩むこともあるでしょう。接する場合のポイントは下記の6つです。順に詳しく解説します。

  • ゆっくり休める環境をつくる
  • 過度な気遣いや干渉をしない
  • 否定せず傾聴する
  • 励まそうとしない
  • 原因を追求しない
  • サポートはできる範囲で行う

ゆっくり休める環境をつくる

本人が安心してゆっくり休める環境をつくるようにしましょう。適応障害の症状を改善するには、ストレスの原因となっている事柄から離れ、休養を取ることが大切です。

たとえば、仕事が原因の場合は、休職や異動、転職といった対処法があります。自宅では、本人が休むことに後ろめたさを感じないように、「休んでいいんだよ」などの安心感を与える声かけをして、しっかり休養が取れる環境を維持しましょう。

過度な気遣いや干渉をしない

過度な気遣いや干渉は、かえって本人の負担となることがあるため、避けましょう。

本人がつらそうにしていると、つい「体調が悪いの?」「何かあったの?」「少しは運動して気分転換すれば?」などと声をかけてしまうこともあるでしょう。しかし、過度に心配されることは、本人にとって負担となることがあります。良かれと思って行動に口出しすることも、相手が望まないことの無理強いになりかねません。

本人から相談されるまでは、極端な気遣いや干渉はせずに、見守る姿勢でいましょう。

否定せず傾聴する

話を聞く際は、否定せずに相手の話したいことに耳を傾けるようにしましょう。

本人は話を聞いてもらうことで安心し、気持ちを落ち着かせることができます。頭の中も整理でき、原因の把握や問題解決に向きあえるようになるでしょう。

場合によっては、話の内容が整理されておらず、矛盾したことを話すことがあるかもしれません。そうした場合でも、本人の話を否定せず、共感や理解を示すことが大切です。

励まそうとしない

「がんばって」「元気を出して」などと励ますことは避けるようにしましょう。

適応障害の人の場合、限界までがんばりすぎたために現在の状態になっているケースも少なくありません。これまでも努力してきたのに、さらにがんばれといわれると、努力を否定されたように感じかねません。自己否定につながり症状が悪化する可能性もあります。

本人のプレッシャーになることもあるため、励ましの言葉は控えた方がよいといえます。

原因を追求しない

原因が明確になれば対処しやすいからといって、原因を無理に突き止めることは避けましょう。

ストレス要因は一つとは限らない上、本人も整理できていないことがあります。無理に追求すると、嫌なことを思い出させたり、話したくないことを話させたりすることになりかねません。無理に原因を追究する中で自責感が増し、症状が悪化する可能性もあります。

原因を無理に追求せずに、本人が話せるようになるまで待つなど、本人のペースを尊重しましょう。

サポートはできる範囲で行う

無理のない範囲でサポートを行うことも大切です。

献身的なサポートを続けた結果、家族が疲れてしまい、体調を崩すケースもあります。家族で共倒れにならないためにも、自分の身体を大事にすることも必要です。自分の時間や体力をサポートに使いすぎることのないように注意しましょう。

サポートは本人と適切な距離をとりながら、できる範囲で行いましょう。

適応障害の方の家族が疲れすぎないようにするためにできること

適応障害の方を支える家族が疲れすぎないためにできることを解説します。

  • 距離を置く時間をとる
  • 自身の趣味や楽しみの時間をつくる
  • 適度に運動を行う
  • 家族会に参加する
  • 適切に支援先を頼る

詳しくは次の通りです。

距離を置く時間をとる

意識して適応障害の家族と距離を置く時間をとることが大切です。

24時間献身的にサポートすることには、無理があります。サポートする側が疲れて気分が沈んだり、体調を壊したりしかねません。サポートする側の気分がすぐれないと、サポートされる側との関係が悪化し、適応障害の回復がスムーズにいかなくなることもあるでしょう。

サポートする側・される側の双方のためにも、意識的に休息時間をとるなど自分のための時間を確保するようにしましょう。

自身の趣味や楽しみの時間をつくる

自分の趣味や楽しみに使う時間を確保することも大切です。

適応障害の方のサポートをしているうちに、気分が落ち込んでしまうこともあるでしょう。気分の落ち込みが続くと、心身の不調につながることもあります。身体を壊さないためにも、気分転換の時間が必要です。趣味に励んだり、友人と食事や会話を楽しんだりするのもよいでしょう。

リフレッシュの時間を持ち、心身の健康を保つようにしましょう。

適度に運動を行う

適度に運動を行うことでストレスを発散し、気分転換をすることも大切です。

適応障害の家族のことにかかりきりだと、考えすぎて疲れたりストレスがたまったりすることがあります。適度な運動は、不安やイライラといったストレスを緩和するのに効果的です。特に、ウォーキングや軽いランニング、サイクリングといった有酸素運動がストレス緩和に適しているといわれています。

心地よいと思える程度の運動を生活に取り入れてみるとよいでしょう。

家族会に参加する

家族会に参加して、悩みを相談したり役立つ情報を得たりすることもよいでしょう。

家族会とは、同じ疾患をもつ人の家族が集まり、情報交換をしたり支え合ったりする会のことです。地域を基盤とする地域家族会や病院を基盤とする病院家族会などがあります。 

同じ障害の家族を持つ人ならではの悩みの相談ができ、「自分だけが悩んでいるのではなかった」と共感し支え合うことができます。また、病院や対処法、利用できる制度のことなど、さまざまな有用な情報交換も可能です。

適切に支援先を頼る

家族だけでなんとかしようとしないで、専門機関などの支援先を頼ることも大切です。

支援先には、医療機関のほか、精神保健福祉センターや障害者就業・生活支援センター、就労移行支援事業所などがあります。必要なサポートが受けられる支援先に相談し、支援を受けることで家族の負担を軽くすることができます。

サポートに疲れたり悩んだりしている場合は、適宜支援先を活用しましょう。

適応障害の人が利用できる支援先や制度

適応障害の人が利用できる支援先や制度には、以下のものがあります。

  • 精神保健福祉センター
  • 障害者就業・生活支援センター
  • 地域障害者職業センター
  • ハローワーク
  • 就労移行支援
  • 自立訓練(生活訓練)

詳しくは次の通りです。

精神保健福祉センター

精神保健福祉センターとは、心の問題で困っている本人や家族などからの相談に応じ、心の病気を持つ人の自立と社会復帰を目指して指導・援助する機関です。全都道府県・政令指定都市に設置されています。

精神保健福祉センターでは、心の健康相談から精神医療に関わる相談、社会復帰の相談、アルコール・薬物についての相談、思春期の相談など、あらゆる精神保健福祉の相談が可能です。

障害者就業・生活支援センター

障害者就業・生活支援センターとは、障害者が自立した職業生活を送れるように、就業と生活の双方の困りごとについて相談できる機関です。全国に設置されており、都道府県知事が指定した法人が運営しています。

就業面の支援としては、職業準備訓練などの就労に向けた準備支援、障害者の特性や能力に合った職務の選定、 就職活動の支援などをしてもらえます。生活面の支援では、健康管理や金銭管理などの日常生活における自己管理についての助言が受けられます。

地域障害者職業センター

地域障害者職業センターとは、ハローワークと連携し、障害者に対する専門的な職業リハビリテーションサービスを行う機関です。全国に設置されており、国の独立法人が運営しています。

就労や職場復帰に向けての相談が可能です。相談には障害者職業カウンセラーなどの専門家が応じ、障害者一人ひとりのニーズに合わせた職業指導や職業準備訓練、職業リハビリテーションを提供しています。

ハローワーク

ハローワーク(公共職業安定所)は、職業紹介サービスを始めとした総合的な雇用サービスを提供する公共の機関です。全国に設置されており、各ハローワークには障害のある求職者専門の窓口が設けられています。

障害に理解のある専門の相談員に相談ができ、就職から職場定着まで一貫した支援を受けられます。応募書類の作成支援や面接指導のほか、働きたい職場での実習を手配してもらえたり、希望に合う求人を開拓してもらえたりします。

就労移行支援

就労移行支援とは、一般企業などでの就労を希望する障害のある方に向けた障害福祉サービスです。就労移行支援を行う事業所は全国にあり、就職・復職に必要な知識やスキルが学べる作業実習や訓練を受けられ、職場探しや就職後の定着支援などのサポートが受けられます。

就労移行支援の支援対象者は下記に該当する人です。

  • 企業などへの就労を希望している
  • 現在失業している
  • 何らかの障害の診断を受けている
  • 18歳以上65歳未満である

失業していることが条件となっているものの、休職中でも利用できることがあります。対象者の条件や例外は自治体によって異なるため、利用の際は自治体の障害福祉課などに確認しましょう。

支援対象者は下記のような支援を受けることができます。

  • 職業訓練:事業所内作業や企業実習、プログラミング・ビジネスマナーなどの実践的スキルを学べるプログラムを実施。
  • 就活支援:適性に合った職場探しや選考フォローなどの支援。
  • 定着支援:就職後、スタッフが職場訪問し職場定着に向けてフォロー。

自立訓練(生活訓練)

自立訓練(生活訓練)は、障害のある人が自立した生活を送れるよう、日常で必要なスキルの維持・向上の訓練を行う障害福祉サービスです。全国にある事業所か、利用者の自宅で受けることができます。

利用対象者は、下記に該当する人です。

  • 地域生活を営む上で、身体機能・生活能力の維持・向上のため一定期間の訓練が必要な障害のある人
  • 65歳未満

自立訓練(生活訓練)では、下記のスキルについて学んでいきます。

  • 生活の基礎をつくる:食生活や生活リズム、セルフケア方法など
  • 自分の生活をつくる:金銭管理、家事、身だしなみなど
  • 自分と障害を理解する:人間関係、コミュニケーション方法など
  • 地域生活を充実する:就労、恋愛、結婚、子育てなど
  • 自分の権利をいかす:社会保障制度、障害福祉制度など

就労移行支援とどう違うのか迷う人もいますが、就労移行支援が「就職」を目指すのに対し、自立訓練(生活訓練)は「自立」を目指す点で異なります。

一人で悩まず適切に支援を活用しよう

適応障害の人をサポートする中で、家族が疲れてしまわないためにも、サポートはできる範囲で行うことが大切です。

家族が疲れるのを避けるためにも、意識的に距離を置く時間をとる、自身の趣味や楽しみの時間をつくる、適度に運動を行う、家族会に参加するといった対策を取りましょう。特に適切に支援先を頼ると負担を軽減することができます。

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就労移行支援や自立訓練(生活訓練)の利用を検討している方はぜひご相談下さい。ご相談や見学は、オンラインでも事務所でもお受けしておりますので、お気軽にお問合せください。

※発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます。

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