大人の発達障害の診断を受けるべきか迷っている人にメリットと注意点を解説

公開: 2025.3.21更新: 2025.3.21

「発達障害*かもしれない」と思いつつもどこで診断を受ければいいかわからなかったり、受診自体に不安があったりして、診断を受けるべきか迷うこともあるでしょう。そこで、診断を受けるかどうか判断するために知っておきたい、診断のメリットや注意点について解説します。

診断を受けられる場所や、大人の発達障害について相談できる場所についても解説しますので、診断に迷っている場合は、ぜひ最後まで目を通してみて下さい。

大人の発達障害とは?代表的な困りごと

大人の発達障害とは、大人になって発達障害であることに気付くことです。発達障害は先天的なもので、大人になって突然発症するものではないとされています。

子どもの頃からあった特性が子どもの時には問題にならなかったものの、大人になって社会生活を送る上で困りごとが生じ、初めて発達障害だと気付くケースが少なくありません。

大人の発達障害の代表的な困りごととしては、次のものがあります。

  • 忘れ物が多い
  • 物をなくしやすい
  • 集中できない
  • 同じ間違いを繰り返す
  • こだわりが強い
  • 予定を忘れる
  • 優先順位がわからない
  • 興味のあることに集中しすぎて業務を忘れる
  • 暗黙のルールがわからない
  • 冗談がわからない
  • 誤字脱字が多い
  • 計算ができない
  • 上司や同僚を怒らせてしまう

上記のようなことで、業務や職場における人間関係に支障が出ることがあります。

大人の発達障害の診断基準

発達障害の診断基準としては、アメリカ精神医学会の精神疾患診断・統計マニュアル「DSM-5」、あるいは、WHO作成の国際疾病分類「ICD-10/ICD-11」が用いられます。

「DSM-5」は精神障害のみの診断分類です。「ICD-10/ICD-11」は世界水準で公表されているほぼ全ての疾病の診断分類を網羅しています。発達障害の診断において、「DSM-5」と「ICD-10/ICD-11」の2つの基準に大きなずれはなく、どちらも参考にされています。

大人の発達障害はどこで診断を受けられる?

発達障害の診断は、医療機関でのみ受けられます。担当の診療科は、精神科か心療内科です。

受診前には、発達障害の診断を受けられるかどうか公式サイトや電話などで確認しておくことがおすすめです。自治体によっては障害福祉課やホームページなどで発達障害の診断を受けられる医療機関を紹介しているケースもあります。

診察の流れは、下記の通りです。

  • 診察・問診

現在、生活や仕事において困っていることや、子どもの頃から現在までの状況について、医師が聞き取りを行います。母子手帳や育児日記、子どもの頃の通知表などがあると役立ちます。

  • 心理検査

必要に応じて、発達検査、知能検査、人格検査といった心理検査を行います。

  • 診断

診察・問診、検査で得られた情報をもとに、総合的に診断がされます。

発達障害の診断を受けることのメリット

発達障害の診断を受けることには次のようなメリットがあります。

  • 自身の特性への理解につながる
  • 医療機関で治療を受けることができる
  • 障害者求人へ応募できる
  • 合理的配慮を受けることができる
  • 障害福祉サービスなどの支援を受けることができる

以下で詳しく解説します。

自身の特性への理解につながる

発達障害の診断を受けると、自分の特性を詳しく知り、理解することができます。

周囲と同じことができずに悩んでいた場合は、自分の特性を知ることで、努力不足や怠けていたわけではなかったと理解でき、自身を認めたり、気が楽になったりすることもあります。

また、発達障害は一人一人特性が異なりますが、自分の得意なこと苦手なことといった特性を知ることで、自身の特性に合った具体的な対策を取ることも可能です。前向きに仕事や生活に向きあうきっかけとなり、生きづらさの緩和につながることもあります。

医療機関で治療を受けることができる

発達障害の診断を受けると、医療機関で治療を受けられるようになります。発達障害の治療法は、主に薬物療法と精神療法の2つです。

薬物療法は、主に注意欠如多動症(ADHD)の多動性や衝動性、不注意といった症状の緩和のために行われます。

精神療法は、悩みに対処する方法を学ぶことです。例えば、ソーシャルスキル・トレーニング(SST)や認知行動療法、環境調整などがあります。それぞれの内容は下記の通りです。

  • ソーシャルスキル・トレーニング

円滑な人間関係を築くのに必要なソーシャルスキル、例えばコミュニケーション方法や感情のコントロールの仕方を学ぶトレーニング。

  • 認知行動療法

物事のとらえ方を変えるなどして、考え方の偏りを修正し、生きづらさやストレスを解消することを目的とした精神療法。

  • 環境調整

本人の困難さに合わせて、職場環境や生活環境を調整していくこと。

障害者求人へ応募できる

発達障害と診断を受け、障害者手帳を取得すると、障害者求人へ応募することができます。

障害者求人では、自分の障害の内容と特性を企業に開示し、障害への配慮を求めながら、企業の障害者雇用で働くことが可能です。

障害者雇用といっても、一般のほかの社員とともに働く場合や、障害者雇用に特化したオフィスなどで働く場合などがあります。自分の障害に必要な配慮内容によって、働く環境も選ぶことができます。

合理的配慮を受けることができる

発達障害の診断を受けることで、合理的配慮を受けることも可能です。

合理的配慮とは、事業者などが、障害のある人から、社会の中にある障壁を取り除くために何らかの対応をしてほしいといわれた時に、負担が重すぎない範囲で対応することをいいます。

例えば自閉スペクトラム症(ASD)で、障害の特性から曖昧な指示が理解できない場合、それを企業に伝え、企業側からイラスト付きの手順書を作成してもらうといった配慮を受けられます。

障害福祉サービスなどの支援を受けることができる

発達障害の診断を受けることで、障害福祉サービスなどの支援を受けられます。

障害福祉サービスとは、障害者支援法に基づき、障害のある人の生活や就労をサポートするサービスのことです。障害の程度や考慮されるべき事情に基づき、例えば下記のようなサービスや訓練が受けられます。

  • 自立訓練(生活訓練)
    自立した日常生活や社会生活ができるよう、生活能力の維持・向上に必要な訓練を行う
  • 就労移行支援
    一般企業などへの就労を希望する人に、就労に必要な知識・能力の向上のために必要な訓練を行う
  • 就労継続支援(A型)
    一般企業などでの就労が困難な人に、雇用して就労の機会を提供するとともに、能力などの向上のために必要な訓練を行う
  • 就労継続支援(B型)
    一般企業などでの就労が困難な人に、就労する機会を提供するとともに、能力などの向上のために必要な訓練を行う

参考:厚生労働省「障害福祉サービスの内容」 

発達障害の診断を受ける際の注意点

発達障害の診断を受ける際には、下記のような注意点もあります。

  • 診断には費用と時間がかかる
  • 障害をすぐには受け入れられない可能性もある
  • 症状があっても診断が出ない場合もある

順に詳しく解説します。

診断には費用と時間がかかる

発達障害の診断には費用と時間がかかる点に注意が必要です。

発達障害の診断では、問診のほか、必要に応じて、発達検査や知能検査、人格検査といった心理検査が実施されます。心理検査は1つの検査につき1~2時間かかり、問診から検査が終わるまで数回通院することも少なくありません。

また初診料や再診料、心理検査料といった費用もかかります。診察料は2,000円前後であるものの、心理検査料については5,000円~10,000円程度、場合によってはそれ以上の費用がかかることもあります。

障害をすぐには受け入れられない可能性もある

発達障害と診断を受けても、すぐに受け入れられないこともあります。

発達障害との診断を受けた場合、これまでの悩みや苦しみの理由がわかり、納得したり安心感を得たりする人がいる反面、ショックを受けて事実を受け入れられない人もいます。

発達障害であることを職場に伝える不安などを抱えてしまう人もいるため、診断を受けることに迷いがある場合は、後述する専門機関などに一度相談してみることがおすすめです。

症状があっても診断が出ない場合もある

発達障害の症状が見られても、発達障害だという診断が出ないこともあります。

発達障害は先述の「DSM-5」や「ICD-10/ICD-11」などの診断基準をもとに診断されますが、いくつかの症状が見られても基準を全て満たさない限り、発達障害とは診断されません。

また、本人の体調やその時の環境によって特性の出方も異なるため、受診のタイミングによって発達障害と診断されなかったり、別の病気と誤診されたりすることもあります。

発達障害を専門とする医師がそこまで多くないこともあり、診断結果が病院によって異なることもあるでしょう。いくつかの医療機関で受診して、ようやく適切な診断が出るケースもあります。

発達障害の診断書が求められる場面とは?

発達障害の診断書が必要となる場面としては次のものがあります。

  • 障害者手帳の取得を申請する時
  • 障害年金の受給を申請する時
  • 障害福祉サービスを利用する時
  • 休職や業務の調整を会社に依頼する時

障害者手帳や障害者年金の申請手続きをする際には、発達障害の診断書が必要となります。障害福祉サービスを利用する場合、障害者手帳がなくとも受けられるサービスは多いものの、診断書は必要といえるでしょう。

また、会社に発達障害を理由に休職や業務の調整を依頼する場合、診断書の提出を求められることがあります。

大人の発達障害に関する相談先

大人の発達障害について相談できる機関としては下記のようなものがあります。

  • 発達障害者支援センター
  • 精神保健福祉センター
  • 障害者就業・生活支援センター
  • ハローワーク
  • 就労移行支援
  • 自立訓練(生活訓練)

順に詳しく解説します。

発達障害者支援センター

発達障害者支援センターとは、発達障害者への総合的な支援を目的とした公的な専門機関です。都道府県・指定都市が実施主体で、自治体や社会福祉法人によって運営されています。

発達障害者やその家族からのさまざまな相談に応じ、必要に応じて保健、医療、福祉などの関係機関と連携して助言・指導を行ってくれます。日常生活や仕事、人間関係など幅広い相談をすることが可能です。

基本的な支援内容は全国共通であるものの、各センターの事業内容には地域性があるため、利用に際しては、事前に問い合わせることがおすすめです。

精神保健福祉センター

精神保健福祉センターとは、心の健康相談から、精神医療に係わる相談、社会復帰相談など精神保健福祉全般についての相談が可能な公的機関です。全都道府県・政令指定都市に設置されています。

心の問題で困っている本人やその家族からの相談に対して、医師、保健師、看護師、作業療法士、精神保健福祉士などの専門知識のあるスタッフが指導・助言をしてくれます。

障害者就業・生活支援センター

障害者就業・生活支援センターは、障害のある人が自立した職業生活を送れるように、就業面と生活面において一体的な支援を行う専門機関です。働き方や生活において不安がある場合に相談できます。全国に設置されており、都道府県知事が指定した法人が運営しています。

就業面の支援としては、障害者の特性や能力に合った職務の選定、 就職活動の支援が受けられます。生活面の支援では、健康管理や金銭管理など日常生活における自己管理についての相談・指導を受けることが可能です。

ハローワーク

ハローワーク(公共職業安定所)は、職業紹介サービスを始めとした総合的な雇用サービスを提供する公共機関です。全国に設置されている各ハローワークには障害者専門の窓口が設けられています。

障害に理解のある専門相談員に就職の相談ができ、就職から職場定着まで一貫したサポートを受けることが可能です。働きたい職場での実習を手配してもらえるほか、希望に合う求人を開拓してもらえることもあります。

就労移行支援

就労移行支援とは、一般企業などでの就労を希望する障害のある人に向けた障害福祉サービスです。就労移行支援は、事業所に通い就職・復職に必要な知識やスキルが学べる作業実習や訓練を受けます。職場探しや就職後の定着支援などのサポートを受けることも可能です。

就労移行支援の利用対象者は下記に該当する人です。

  • 一般企業などへの就労を希望している
  • 現在失業している
  • 何らかの障害の診断を受けている
  • 18歳以上65歳未満である

利用対象者の条件や例外は自治体によって異なるため、利用に際しては自治体の障害福祉課などで確認することがおすすめです。

自立訓練(生活訓練)

自立訓練(生活訓練)は、障害のある人が自立した生活を送れるよう、日常で必要なスキルの維持・向上の訓練を提供する障害福祉サービスです。全国にある事業所か、自宅で訓練を受けます。

自立訓練(生活訓練)の利用対象者は下記に該当する人です。

  • 地域生活を営む上で、身体機能・生活能力の維持・向上のため一定期間の訓練が必要な障害のある人
  • 65歳未満

自立訓練(生活訓練)では、下記のようなテーマのプログラムで学ぶことができます。

  • 食生活や生活リズム、セルフケア方法など
  • 金銭管理、身だしなみの整え方など
  • 人間関係の構築、コミュニケーション方法など
  • 社会保障制度、障害福祉制度などの学習

診断を受けるべきか迷ったら専門機関に相談してみよう

発達障害の診断を受けると、自身の特性について深い理解ができたり、医療機関で治療を受けられたり、障害福祉サービスなどを利用できたりと、メリットは多くあります。

しかし、診断結果を受け入れられない場合や、適切な診断が出るまで時間や費用がかかる場合もあります。

大人の発達障害で、診断を受けるべきか迷ったら専門機関に相談してみることがおすすめです。

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*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます。

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