メニエール病はどんな人がなりやすい?原因や症状、診断方法と治療法も解説

公開: 2025.3.21更新: 2025.3.21

突然めまいの発作が起こり、耳鳴りや難聴などの症状を伴うメニエール病。症状が長く続いたり、発作を繰り返したりすることで仕事や生活に支障が出てしまう人も少なくありません。

この記事では、原因や症状などメニエール病のメカニズムについて解説します。診断方法や治療方法のほか、仕事ができなくなった場合の対処法も紹介しているので、参考にしてください。

メニエール病とは?

メニエール病とは、発作的な回転性のめまいや耳鳴りなどが長期間、繰り返し起こる病気です。めまいの発作が起こると吐き気や耳が詰まった感じが数十分から数時間続きます。

仕事中や移動中などでも発作が起こる可能性があるので、症状が続くと日常生活や仕事などに支障をきたすこともあります。さらに、左右どちらかの聴力が低下することもあるので、早期の受診が重要です。

メニエール病はどんな人がなりやすい?

メニエール病はストレスや生活習慣の影響を受けやすい病気とされています。特に、以下の特徴に当てはまる人は注意が必要です。

  • 几帳面で責任感が強い方
  • 40~60代の方
  • 女性

上記は統計的に多い傾向にあることを示しているだけで、当てはまるからといって必ずしもメニエール病であるとは限らない点に留意してください。もちろん男性が発症する場合もあります。特に、職場で責任のあるポストを任されている方や、育児や兼業のバランスに悩んでいる方などは注意しましょう。

メニエール病の主な症状

メニエール病の代表的な症状は発作的に起こる強いめまいや、耳が詰まったような耳閉感などです。吐き気や嘔吐、難聴を伴うこともあります。以下に、主に見られる症状をまとめました。

  • 回転性めまい:天井や周囲がぐるぐる回るような感覚に襲われる
  • 耳鳴り:耳の奥で「ブーン」「ザー」という低音の耳鳴りが起こる
  • 耳閉感:耳が詰まった感じが続く
  • 浮遊感:発作が収まった後も、ふわふわした感じが続く
  • 難聴:主に片側の耳の低音から聞こえづらくなる

発作は一度起こると数十分から数時間続き、まれに20時間以上続くこともあります。発作が落ち着いたあとは数日から数週間で回復しますが、発作が繰り返されると難聴が進行する場合があります。

メニエール病の原因はなに?

メニエール病は、内耳にある内リンパ液が増えすぎることで発生する、「内リンパ水腫」が主な原因です。内リンパ液は音を聞くために欠かせないものですが、増えすぎると内耳の圧力が上がり、三半規管や蝸牛にも影響が生じてめまいや耳鳴りを引き起こす原因になります。

内リンパ水腫が発生する正確なメカニズムはまだ解明されていませんが、以下のような状態や行動に当てはまると内リンパ液が増えやすくなります。

  • ストレスや疲労
  • 塩分の多い食事による水分バランスの乱れ
  • 血流の悪化
  • ホルモンバランスの変化

メニエール病はどこで診断できる?

メニエール病の診断は耳鼻咽喉科で受けることができます。めまいや耳鳴りなどの症状は、突発性難聴や脳の疾患などでも見られる場合があるので、症状が続く場合は適切な治療をするためにも早めに受診しましょう。ここでは、メニエール病の主な診断・検査方法を紹介します。

メニエール病の診断・検査方法

メニエール病の診断には複数の検査が用いられます。代表的な検査方法は以下のとおりです。

  • 聴力検査
    メニエール病によって引き起こされる低音域の聴力低下を確認する。症状が進行すると高音域の聴力低下や難聴に至ることもある。
  • 眼振検査
    メニエール病で多く見られる、眼振と呼ばれる異常な眼球の動きがないかを確認する。
  • 平衡機能検査
    平衡感覚の乱れがないかを確認する。特に発作時にはバランスが取れなくなる傾向が強い。
  • 画像検査(MRI・CT)
    内リンパがどこにどれくらいたまっているかを確認する。また、メニエール病と似た症状を引き起こす脳腫瘍や脳梗塞といった脳の疾患があるかを調べる。

メニエール病による難聴の症状は、発達障害*や精神疾患の特性と似ているため、混同されることがあります。しかし、発達障害の聴覚問題は先天的な脳機能の発達のかたよりに起因しているため、根本的な原因が異なります。

メニエール病の治療方法

メニエール病は改善までに時間がかかることがあり、完治が難しいケースも少なくありません。そのため、治療は主に症状の軽減や発作の頻度を減らすことを目的に行われることが多いです。ここではメニエール病の主な治療方法を3つ紹介します。

生活習慣の改善

メニエール病の改善は、生活習慣の見直しが重要だと言われています。主な方法として、以下のような対策が有効です。

  • ストレスコントロール
    適度な運動や深呼吸・瞑想といったリラクゼーション法を取り入れて、ストレスを解消する。
  • 十分な睡眠と規則正しい生活
    睡眠不足になると発作を引き起こしやすくなる傾向にあるため、十分な休息を取ることが重要。
  • 水分補給と塩分管理
    塩分の摂りすぎはリンパ液の異常を引き起こす一因となるので、減塩やこまめな水分補給が大切。

薬物療法

メニエール病の薬物療法では、めまいや耳鳴りを軽減し、発作の頻度を抑えるために以下のような薬が使用されます。

  • 利尿薬
    余分な水分を尿として排出させ、内耳のリンパ液の過剰な増加を防ぐ。
  • 吐き気止め
    発作時の吐き気を抑えるための頓服薬として用いられる。
  • 内耳循環改善薬(抗めまい薬)
    内耳の血流の増加・改善をしてむくみを解消する。
  • ビタミン剤
    神経機能をサポートするビタミンB12などが処方される。
  • 漢方薬
    体内の水の巡り改善のため、苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)などが用いられる。

中耳加圧療法

中耳加圧療法(内耳加圧療法)とは、専用の装置を使って耳の鼓膜を通じて中耳に圧力をかけ、内耳のリンパ液の流れを調整することで改善に導く治療法です。薬物療法では改善が見られない場合に用いられることがあり、外科的な手術が必要ないことや、副作用が少ないことなどがメリットとして挙げられます。

医師の指導のもと、貸し出された加圧装置を使い、1日2回自分で加圧を行う方法が一般的です。約60~70%の方に効果が見られており、費用対効果が高い治療法として注目されています。

メニエール病と関係の深い病気

メニエール病のように、めまいや耳鳴り、難聴などを伴う病気はほかにも多く存在します。特に突発性難聴や良性発作性頭位めまい症、聴覚過敏とは症状が似ている部分があり、正確な診断が必要です。ここではそれぞれの病気の特徴やメニエール病との違いを解説します。

突発性難聴

突発性難聴とは、音を感じ取って脳に伝える役割をしている有毛細胞が何らかの原因によって傷つき、突然片耳の聴力が低下する病気です。有毛細胞が損傷する原因ははっきりわかっていませんが、ウイルス感染や血流障害が関与していると考えられています。

突発性難聴とメニエール病との違いは以下のとおりです。

項目突発性難聴メニエール病
発症の仕方突然片耳の聞こえが悪くなる回転性のめまいが起こり、難聴を伴う場合が多い
めまい伴わない場合もある強い回転性めまいを繰り返す
原因有毛細胞の損傷(ウイルス感染・血流障害の可能性)内耳のリンパ液の増加(内リンパ水腫)

なお、突発性難聴は発症後できるだけ早く治療を開始することが重要です。放置すると聴力が戻らなくなる可能性があるため注意しましょう。

良性発作性頭位めまい症

良性発作性頭位めまい症とは、特定の頭の動きによって強い回転性めまいが起こる病気です。何らかの原因で耳石(じせき)が剥がれ、三半規管に入り込むことでめまいが引き起こされます。

良性発作性頭位めまい症とメニエール病との違いは以下のとおりです。

項目良性発作性頭位めまい症メニエール病
めまいの持続時間1分以内の場合が多い数十分〜数時間続く
発症の仕方頭を動かすことで誘発突然発作的に起こる
難聴・耳鳴り通常は伴わない難聴や耳鳴りを伴う
原因三半規管に入り込んだ耳石の蓄積内耳のリンパ液の増加(内リンパ水腫)

なお良性発作性頭位めまい症は、頭や体を動かすことで耳石を元の位置に戻す「耳石置換法」で改善が期待できます。

聴覚過敏

聴覚過敏とは、声や周囲の音に対する過敏性が増した状態のことです。通常では気にならない音が不快に感じられたり、小さな音でも大きく聞こえたり、特定の音が耳障りに感じたりします。

聴覚過敏は耳や脳の機能が上手く働かない、自律神経の乱れ、発達障害の特性などが主な原因です。耳の機能に関しては、メニエール病の発症も誘因として考えられています。メニエール病や突発性難聴などの病気により聴覚過敏が引き起こされた場合、音自体は聞こえるものの特定の音や音域に不快感が生じるのが特徴です。

例えば日常生活の中では、日常の環境音がうるさく感じたり、大きな音を聞くと耳に痛みを感じたり、人混みや騒音の多い場所を不快に感じたりする場合があります。

メニエール病で仕事ができなくなったらどうする?

メニエール病の症状が悪化して仕事に支障が出ると、このまま働き続けるのは難しくなるかもしれません。もしメニエール病の影響で仕事ができなくなった場合、どのように対処すればよいか知っておくと安心です。ここでは、仕事ができなくなった場合の対処法や選択肢を紹介します。

職場に相談する

メニエール病の症状が仕事に影響を与えるようになった場合は、まず職場の上司や人事担当者、産業医などに相談し、病気に対する理解を得ることが大切です。また、障害や難病のある方に合わせたサポートや職場環境の調整などを行う「合理的配慮」を求めることもできます。合理的配慮に障害者手帳の有無は問われないため、メニエール病の症状で就業に制限が出ている場合は職場に相談してみましょう。

合理的配慮を申し出る際には、以下を伝えるとよいでしょう。

  • 発作時の対応(休憩を取る、静かな場所に移動するなど)
  • 通院のためのスケジュール調整
  • テレワークや時短勤務などを相談

適切な休養と治療をする

メニエール病は症状が長引くことが多いので、適切な休養と治療によってストレスや疲労を軽減することが大切です。特に、以下のような点を意識しましょう。

  • 発作が頻繁に起こる場合は、休職を検討する
  • 仕事と私生活の両方でストレス管理を意識し、生活習慣を見直す
  • 医師の指導のもと、薬物療法や中耳加圧療法を継続する

メニエール病は再発しやすい病気ですが、適切な治療と生活管理である程度症状のコントロールが可能です。継続しやすく自分に合った付き合い方を探しましょう。

障害者手帳の取得を検討

メニエール病の症状が重く、日常生活や仕事に大きな支障が出る場合は、障害者手帳(身体障害者手帳)を取得できる可能性があります。障害者手帳の取得には以下のようなメリットがあります。

  • 通勤や通院にかかる費用の負担を軽減できる
  • 障害者向けの福祉サービスを利用できるようになる
  • 障害者雇用での就職が可能になる

なお、障害者手帳を取得するには医師の診断書と自治体への申請が必要です。手帳の交付条件に該当するかどうかは症状の程度や医師の診断によって異なるので、まずはかかりつけ医に相談しましょう。

就労支援制度を利用する

メニエール病の影響で現在の仕事を続けることが難しくなった場合は、障害がある方を対象に就職活動をサポートする就労支援サービスの利用も検討しましょう。扱っている求人は、障害があることを前提にしているので、体調に配慮した働き方を見つけやすいです。

中でも就労移行支援サービスは、スキルアップのカリキュラムや障害理解の講座なども受けられます。自分の状態を見つめ直し、これから進む道を考える機会にもなるでしょう。

なお、就労支援制度は障害福祉サービスの一環として提供されているため、多くの方が自己負担なし、または低額の負担で利用できます。就労支援を受けるには、まずお住まいの自治体の福祉窓口に相談しましょう。

Kaienの支援サービス

Kaienでは、障害のある方を対象に「就労移行支援」と「自立訓練(生活訓練)」などの福祉支援サービスを実施しています。

就労移行支援では、一般企業への就職を目指す方に向けた職業訓練を中心に、ビジネスマナーの習得や、履歴書作成の支援、職場実習などを通じて、働くためのスキルを身につけることができます。さらに、長く安定して働けるように就職後の定着支援も行っています。

自立訓練(生活訓練)では、金銭管理や家事スキル、コミュニケーション能力の向上など、生活習慣を身につけて自立するためのプログラムを提供しています。就労に自信が持てない方や自分の進路を見つめ直したい方は、それらの準備期間として利用を検討してみてください。

メニエール病になりやすい人は早めの治療がカギ

メニエール病は、症状を繰り返すとめまいや難聴が進行し、日常生活や仕事に大きな影響を与えることがあります。今回紹介した症状が見られた場合は早めに耳鼻咽喉科を受診し、生活習慣の見直しや適切な治療を行いましょう。

また、症状をコントロールするには、無理をせず自分に合った生活スタイルを見つけることが大切です。メニエール病の症状で働き続けるのが難しい場合は、就労移行支援の利用を検討するのも一つの方法です。無理をせず、自分のペースで病気と向き合いましょう。

*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます。

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