気分の浮き沈みが激しいのがつらい|診断方法や感情の起伏に関わる病気を解説

公開: 2025.3.19更新: 2025.4.1

感情の波が激しく周囲を振り回してしまう、安定した生活を維持するのが難しいなど、気分の浮き沈みが原因で日々の生活に支障をきたしている場合、病気が関わっている可能性があります。気分の浮き沈みの激しさは、周囲はもちろん本人も振り回されることで疲弊してしまいます。つらさを軽減するには、正しい診断を受け、治療をすることが大切です。

今回は気分の浮き沈みの激しさをテーマに、考えられる病気や対処法、利用できる支援機関を解説します。ぜひ参考にしてください。

気分の浮き沈みが激しいとはどういう状態?

感情とは、喜びや悲しみ、苦しさと楽しさなど、相反する二極性を持つものです。そして気分とは、この感情が持続している状態を指します。

誰しも感情の起伏はあるものの、正常の範囲を越えた感情のアップダウンが一定期間続く場合は、気分の浮き沈みが激しい状態といえます。感情のアップダウンは思春期や生理前に起こりやすくなりますが、長引く場合は病気が隠れている可能性もあるため注意が必要です。

気分の浮き沈みに関するセルフ診断

気分の浮き沈みが病気によるものなのかどうか、その判断基準は症状や病気の種類によって異なるため、一概に断言できません。しかし、以下のような項目に該当するかセルフチェックすることは可能です。

  • 強い不安感やイライラが抑えられない
  • 人に会いたくなくなる
  • 気分が沈みがちになる
  • 何をするのも面倒だと思う
  • 集中力の低下もしくは決断困難な時がある
  • 夜も眠らずに活動することがある
  • 人の話を聞かずに自分だけ話し続けることがある

上記のチェック項目はあくまでも受診目安の参考にするもので、該当するからといって必ずしも病気とは限らない点に注意しましょう。

気分の浮き沈みや感情の起伏が激しくなる病気

気分の浮き沈みや感情の起伏が激しくなる際に考えられる病気として、以下が挙げられます。

  • 双極性障害(双極症/躁うつ病)
  • 非定型うつ病
  • 境界性パーソナリティー症
  • 月経前症候群(PMS)
  • 発達障害

それぞれの特徴や症状を見ていきましょう。

双極性障害(双極症/躁うつ病)

双極性障害(双極症)は、かつて躁うつ病とも呼ばれていました。双極性障害とは気分の高揚(躁状態)と落ち込み(うつ状態)を繰り返す病気で、気分の浮き沈みの特徴によってⅠ型とⅡ型にわかれます。

躁状態の時は、自信があって何でもできる気がしたり、衝動的に大きな買い物をしてしまったり、じっとできずに過活動状態になってしまうといった症状が見られます。反対にうつ状態の時は、激しく気分が落ち込む、何に対しても意欲がわかない、疲れやすいといった症状が現れます。

Ⅰ型は躁状態の症状が強く、Ⅱ型は軽い躁状態とうつ状態を繰り返す点が特徴です。

非定型うつ病

非定型うつ病とは、典型的なうつ病の症状や診断基準を満たしているものの、同時にうつ病とは異なる症状も現れる病気を指します。

具体的には、以下のような点が特徴です。

  • 良い出来事があると気分が回復する(気分・反応性)
  • 自分を否定されると激しく落ち込む/強いストレスを感じる(拒絶過敏性)
  • 食欲増加や過眠傾向が見られる(植物症状)
  • ストレスや嫌なことに対して体が動かなくなる/倦怠感がある(鉛様麻痺)

非定型うつ病は一般的なうつ病とは異なり、上記のような「気分・反応性」「拒絶過敏性」「植物症状」「鉛様麻痺」といった症状の発露がみられます。なお非定型うつ病は、基本的にうつ病と治療方法は同じです。

境界性パーソナリティ症

境界性パーソナリティ症とは、強い見捨てられ不安から感情のコントロールが難しく、不安定になって衝動的な行動をしたり、周囲を巻き込んで問題行動を起こしたりしてしまうパーソナリティ障害の一つです。また、物事に対して「白か黒か」「敵か味方か」といった二極思考になりがちで、スイッチが入ると極端な行動に走るといった特徴もあります。

境界性パーソナリティ症は他にも、相手を理想化し、相手が少しでも自分の期待に外れた言動をすると拒絶されたと感じ、かんしゃくを起こすケースもあります。こうした激しい気分の浮き沈みにより日常生活に支障が出て、本人が疲弊してしまうことが少なくありません。

月経前症候群(PMS)

月経前症候群(PMS)は、生理の3~10日前から心身に不調が現れる病気です。のぼせや倦怠感、過食や偏食、お腹・頭・腰の痛みといった身体的症状から、情緒の不安定さ、抑うつ、集中力の低下やイライラといった心の症状まで、その内容はさまざまです。

こうした症状は、生理が始まると自然に消失・軽減します。PMSの中でも特に精神症状が重く日常生活に支障をきたす場合、「月経前不快気分障害(PMDD)」と診断されることもあります。生活リズムや食生活を整えるほか、低用量ピルや漢方などの薬物療法でも改善が期待できます。

発達障害

気分の浮き沈みが激しくなる原因として、発達障害*も挙げられます。発達障害とは、先天的な脳機能のかたよりにより、対人関係や社会生活などに困難が生じる精神疾患の一つです。

発達障害には主にADHD(注意欠如多動症)やASD(自閉スペクトラム症)、限局性学習症(SLD)の3種類があります。その中でもADHDとASDは、特性により感情のコントロールが難しい傾向があります。

例えばADHDの方は、じっとできず衝動的に行動してしまう特性があり、その衝動性からカッとなったり、嫌な経験がフラッシュバックして感情的になったりする場合があります。

一方ASDの方はこだわりが強く、曖昧な表現や暗黙の了解の理解が難しいといった特性が挙げられます。自分のルールやこだわりを乱されると、反発心からイライラしたり、相手に対して攻撃的になったりするケースも珍しくありません。

大人の発達障害に関する特性や診断方法などは、こちらの記事に詳しくまとめてありますので併せてご覧ください。

大人の発達障害(神経発達症)とは?種類と症状、診断方法や相談先を解説

気分の浮き沈みが激しくなる原因

気分の浮き沈みが激しくなる原因として、病気以外では以下が挙げられます。

  • ストレス
  • 不規則な生活習慣
  • 女性ホルモンの乱れ
  • 自律神経失調症

それぞれ詳しく見ていきましょう。

ストレス

人間関係や環境の変化、ショックな出来事など、日常生活の中で知らない間に不安やストレスが蓄積されると、自律神経が乱れて気分の浮き沈みが激しくなることがあります。ゆっくりとお風呂に浸かる、趣味に没頭する、体を動かす、誰かと話すなど、なるべくストレスを溜めない生活を意識することが大切です。ストレス発散に飲酒をする方もいますが、過度な飲酒は体だけでなく精神にも負担をかけてしまうため、適度な飲酒量を心がけましょう。

不規則な生活習慣

生活リズムの乱れは、心身の健康にさまざまな影響を及ぼします。不規則な生活は、精神の安定や安心感を高める神経伝達物質「セロトニン」の分泌をさまたげます。セロトニンが減少すると抑うつや無気力感など、うつ病のような症状が現れることも知られています。規則正しい生活を送ることは、気分の浮き沈みを減らす上で非常に大切です。

朝は決まった時間に起きる、軽めの運動を心がける、就寝の3時間前には食事を終わらせ、お風呂で体をあたためるなど、無理なく続けられる習慣を取り入れましょう。

女性ホルモンの乱れ

女性の場合、女性ホルモンの乱れも気分のアップダウンの原因となります。

先ほど挙げた月経前症候群(PMS)のほかに、妊娠中から産後にかけて気分が落ち込む、涙もろくなる、不安感がつのるといったマタニティブルーや、閉経前後に女性ホルモンが減少することによって起こる更年期の情緒不安定など、年齢やライフステージによって出てくる症状が異なります。

女性ホルモンをつかさどる視床下部は、ストレスに敏感です。過度なストレスは女性ホルモンの乱れにもつながるため、適度に休息をとる、無理をしないなど、ストレスを溜めない生活を意識することが大切です。

自律神経失調症

自律神経失調症とは、ストレスなどが原因で自律神経のバランスが崩れ、動悸や血圧上昇、片頭痛、疲れやすさなど、全身にさまざまな症状が出る状態です。自律神経をコントロールする自律神経系は脳や臓器など全身のあらゆるところにあるため、それぞれの臓器などに現れる症状によって別の病名がつくケースもあります。

自律神経失調症はイライラや抑うつ、不安感ややる気の低下といった精神的な症状が現れる点も特徴です。症状が慢性的に続く場合は、医療機関で適切な治療を受けるようにしましょう。

気分の浮き沈みが激しいのはどこで診断できる?

気分の浮き沈みの激しさが病気によるものかどうかは、心療内科や精神科、メンタルクリニックといった心の不調を専門とする医療機関で診断してもらえます。

診断にはアメリカ精神医学会による「DSM-5-TR(精神疾患の診断・統計マニュアル)」と世界保健機関(WHO)の「ICD-11(国際疾病分類)」などのガイドラインが使用されます。たとえばうつ病の場合、DSM-5-TRでは「ほとんど毎日、一日中気分が落ち込む」「興味・喜びを感じない」といった項目が定められており、規定数以上の該当があるとうつ病の診断が下ります。

気分の浮き沈みによって生じるトラブル

気分の浮き沈みによって生じるトラブルには、人間関係の悪化や仕事が続かないなど、さまざまなものがあります。また、こうしたトラブルによって心身ともに疲弊してしまうケースも少なくありません。どういったものがあるか詳しく見ていきましょう。

人間関係の悪化

気分の浮き沈みが激しいと、以下のようなトラブルで人間関係が悪化してしまう場合があります。

  • 感情が不安定でコントロールできなくなり周囲を巻き込む
  • 人との誘いを断りすぎて相手を不快にさせる
  • 衝動的な行動で相手に迷惑をかける
  • 相手に幻滅し急に関係を終わらせる
  • 返事が来るまで何度も相手に連絡する
  • 突然強い虚無感に襲われ突発的な行動をとる

こうしたトラブルで学校や職場などで人間関係が悪化し、社会生活に支障をきたすケースが見られます。気分の浮き沈みの激しさによる典型的なトラブル例といえるでしょう。

仕事が続かない

気分の浮き沈みが激しいと、周囲の人間とトラブルを起こしたり突然強い抑うつにより出社できなくなったりと、1つの仕事を続けるのが難しくなる場合があります。また、衝動的に仕事を辞めてしまうケースも珍しくありません。

気分の浮き沈みが激しい方が仕事を長続きさせるには、適切な治療の継続のほか、症状に対する職場の理解やサポートも欠かせません。たとえば双極性障害の場合、躁とうつの時で周囲が対応を変える、業務量が大きく変動しない業務を振り当てるといった対処法が挙げられます。

感情の起伏が激しくならないための対処法

感情の起伏の激しさを抑えるには、以下のような対処法があります。

  • 適切な治療を受ける
  • 規則正しい生活リズムで過ごす
  • リラックス方法を身に付ける

1つずつ詳細を見ていきましょう。

適切な治療を受ける

先ほど触れたように、気分の浮き沈みが激しくなる病気として、自律神経失調症や双極性障害、非定型うつ病などを紹介しました。こうした病気が原因で感情の起伏が激しくなっている場合、適切な治療を受けることで症状が軽減される可能性があります。治療内容は病気により異なりますが、投薬やカウンセリング、認知行動療法などが挙げられます。治療を始めるには、まず医療機関を受診し、診断を受けましょう。

規則正しい生活リズムで過ごす

睡眠不足は心身のバランスを崩し、感情の乱れや情緒不安定などメンタルの不調にもつながります。規則正しい生活を続けることは、気分の浮き沈みの激しさを軽減する方法として有効です。

毎朝決まった時間に起きる、軽い運動の習慣を取り入れる、1日3食食べるなど、無理のない範囲で少しずつ生活リズムを整えていきましょう。また、仕事が忙しくて不規則な生活を送っている場合は、休職や転職を検討するのも1つの手です。

リラックス方法を見つける

日常生活の中でストレスを溜め込むと、自律神経が乱れて気分の浮き沈みの原因となる場合があります。そのため、自分に合ったリラックス方法を見つけ、溜まったストレスを解消することが大切です。

自分の趣味や興味のあることに取り組む、あたたかいお風呂にゆっくり浸かる、信頼できる人と話すなど、リラックス方法は人それぞれ異なります。あえて予定を入れず、1日家でのんびり過ごすのも良いでしょう。自分がリラックスできる方法を見つけ、なるべくストレスを溜めない生活を心がけましょう。

支援機関を頼る

感情の起伏の激しさに双極性障害や発達障害などの精神疾患が隠れている場合、自分だけでどうにかしようとするのは難しいかもしれません。そんなときは、支援機関を頼る方法もあります。支援機関には就労移行支援事業所や自立訓練(生活訓練)、障害者就業・生活支援センターなどさまざまな種類があり、受けられるサービスがそれぞれ異なります。

たとえば1人では感情のコントロールが難しい場合、アンガーマネジメントやソーシャルスキルトレーニングなどができる支援機関が良いでしょう。また、気分の浮き沈みにより仕事が続かないなら、理解ある職場や特性に合った仕事への転職や再就職をサポートする就労移行支援事業所の利用がおすすめです。

Kaienの支援サービス

Kaienでは、主に以下の支援サービスを実施しています。

  • 就労移行支援
  • 自立訓練(生活訓練)

それぞれの特徴や支援内容を、以下で見ていきましょう。

Kaienの就労移行支援

Kaienの就労移行支援では、実践的な職業訓練を受けて、自分の特性に合った仕事がどういったものか探すことができます。また、ソーシャルスキル講座やキャリア・プランニングといった座学を通して、自分の特性への理解を深めることが可能です。

就活サポートでは、病気や障害に理解のある200社以上の提携企業の求人を中心に、Kaienスタッフと二人三脚で利用者の方に合った仕事を見つけていきます。就職後は、スタッフが業務への困りごとや生活上の悩みがないか、丁寧に職場定着のサポートをします。

Kaienでは無料で見学会や体験利用を実施していますので、気になる方はぜひ、お気軽にご連絡ください。

Kaienの自立訓練(生活訓練)

Kaienの自立訓練(生活訓練)では、生活リズムの整え方からコミュニケーションの方法、お金の管理の仕方まで、自立した生活に必要なプログラムを実践的に受けることができます。特に感情コントロールのプログラムでは、マインドフルネスなどを取り入れながら、ストレスや不安、抑うつといった感情への対処方法を学ぶことが可能です。

プログラムは100種類以上あり、事業所の外で行う見学会や体験会も頻繁に開催されています。バラエティ豊かなプログラムを通して、自分の特性とうまく付き合いながら自立した生活や就労への基盤を整えていきます。

自立訓練(生活訓練)も無料で見学会や体験利用を実施していますので、お気軽にご連絡ください。

気分の浮き沈みが激しいときは正しい診断を

気分の浮き沈みが激しいと、人間関係が悪化したり仕事が続かなかったりと、さまざまなトラブルが発生します。感情の起伏の激しさの原因は、ストレスや不規則な生活習慣などの他に、発達障害や双極性障害などの病気が隠れているケースも少なくありません。適切な治療で症状が改善する場合もあるので、まずは医療機関を受診し、正しい診断を受けることが大切です。

*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます

監修者コメント

気分の浮き沈みは情動不安定という用語で表現されることもありますが、本人と周囲の双方にとって辛い状態と言えます。本記事にある通り、その原因となる疾患や、ストレス要因は様々ありますので、解決策は1つではありません。ただ、治療目標として原因の根本的な部分に依らず、ひとまず情緒の安定を目指すことはよくあります。ひとまず薬を使って対症療法的に気分の浮き沈みを安定させてから、根本的要因を探ることもありえます。

また、必ずしも精神(心もしくは脳と言っても)や環境だけではなくて、身体疾患が影響していることもあります。記事にある通り月経に関連した気分の不安定もありますし、他に甲状腺機能障害は代表的ですが、めったにない疾患(抗NMDA受容体脳炎など)が発症していることもあります。特に、ある時期から突然気分の浮き沈みを経験するようになった場合には注意が必要です。

監修 : 松澤 大輔 (医師)

2000年千葉大学医学部卒業。2015年より新津田沼メンタルクリニックにて発達特性外来設立。
2018年より発達障害の方へのカウンセリング、地域支援者と医療者をつなぐ役割を担う目的にて株式会社ライデック設立。
2023年より千葉大子どものこころの発達教育研究センター客員教授。
現在主に発達障害の診断と治療、地域連携に力を入れている。
精神保健指定医、日本精神神経学会専門医、医学博士。


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