どもる病気とは?大人の吃音の症状や仕事でのポイントを解説

公開: 2025.3.21更新: 2025.3.21

「話そうとすると言葉が詰まる」

「うまく会話ができず、職場でのコミュニケーションに負担を感じる」

このような悩みを抱えている方は少なくありません。吃音症は子どもに多いと思われがちですが、大人になっても症状が続くケースがあります。仕事や日常生活での会話にストレスを感じ、どのように向き合えばよいのか悩んでいる方もいるでしょう。

本記事では、大人の吃音症の特徴や原因、仕事での工夫、活用できる支援制度について詳しく解説します。吃音の症状に悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。

どもる病気とは?大人の吃音症

どもる症状が出る障害のひとつに、吃音症があります。吃音症は子どもに多く見られる症状ではありますが、大人でも約100人に1人の割合で症状が現れるといわれています。

吃音は日常会話や仕事でのコミュニケーションに影響を及ぼすこともあり、症状に悩む方は少なくありません。もちろん、上記のような症状のある方すべてが吃音症であるとは限りませんが、「言葉がなめらかに出てこない」「話そうとすると言葉に詰まる」といった症状が続く場合、吃音症の可能性があります。

吃音症の種類

一般的に、吃音症は「発達性吃音」と「獲得性吃音」の2つに大きく分けられ、発症時期や原因が異なります。

発達性吃音は幼少期に発症するケースが多く、体質や発達の過程が関係していると考えられています。一方、獲得性吃音は脳の損傷やストレスなど、後天的な要因によって発症するものです。

ここでは、吃音の種類について詳しく見ていきましょう。

発達性吃音

発達性吃音は、体質や発達的な要因、周囲の環境が関係していると考えられていますが、正確な原因はまだ解明されていません。吃音症の約9割がこのタイプに分類され、幼児期に発症するケースがほとんどです。特に、男性に多く見られる傾向があります。

「本人の体質」「認知や運動の発達」「周囲との関わり」といった複数の要因が影響し合って発症すると考えられており、中でも体質的な要因が大きく、発症の約7〜8割を占めるといわれています。

幼少期に発症した場合、小学校に入るまでに症状が自然に改善するケースが多いものの、すべてのケースで治るわけではなく、大人になっても吃音が続く方も少なくありません。

獲得性吃音

獲得性吃音は、神経の病気や強いストレスなど、後天的な要因によって発症するものです。大きく「獲得性神経原性吃音」と「獲得性心因性吃音」の2つに分類されます。

獲得性神経原性吃音は、頭部の怪我や薬物の影響、神経の病気などが原因で発症する吃音症です。脳卒中や認知症、事故、薬物中毒などがきっかけとなることが多く、発症後に言葉がスムーズに出なくなるケースがあります。

一方、獲得性心因性吃音は、強いストレスやトラウマが原因で発症する吃音症です。特定の場面や精神的な負担がかかる状況で、吃音の症状が強く現れる傾向があります。

吃音症の特徴

「どもる」という症状の現れ方は、人それぞれです。言葉を繰り返す、音を引き伸ばす、発話が詰まるといったさまざまなパターンがあり、特定の症状が強く出る場合もあれば、複数の症状が組み合わさるケースもあります。

ここでは、吃音症によく見られる特徴について詳しく見ていきましょう。

連発

連発とは、言葉の一部を繰り返してしまう症状です。特に、話し始めの最初の音を繰り返すケースが多く見られます。

例:「おはよう」→「お、お、お、おはよう」

伸発

伸発とは、言葉の一部を引き伸ばして発音してしまう症状です。特に、話し始めの音から次の音に移るまでの間が長くなります。

例:「おはよう」→「おーーはよう」

難発

難発とは、言葉が詰まって出てこなくなる症状を指します。のどに力が入り、最初の音がなかなか出てこないのが特徴です。場合によっては、最初の音だけが強調されることもあります。

例:「おはよう」→「・・・っおはよう」

年齢ごとの吃音症の症状

吃音症は幼少期に発症するケースが多いものの、成長とともに改善する場合もあれば、大人になっても症状が続くことがあります。年齢によって症状の現れ方が変化する傾向があり、特に学童期以降は吃音を自覚しやすく、それに伴う心理的な負担や回避行動が見られるケースも少なくありません。

ここでは、幼少期・学童期〜思春期・成人期における吃音症の特徴について詳しく解説します。

幼少期

幼少期の吃音症には、連発や伸発といった症状がよく見られます。100人に5〜8人の割合で幼少期に吃音症を発症するといわれていますが、小学生までに自然に改善するケースが一般的です。

発達の過程では、多くの子どもが「言葉がスムーズに話せない」という経験をしますが、それがすべて吃音症に該当するわけではありません。一時的な言葉の詰まりや繰り返しがあっても、多くは成長とともに解消されます。

一方で、「どもる頻度が高い」「特定の音を発話する際に強い抵抗を感じる」「言葉を発することを避けるようになる」などの症状が頻繁に見られる場合は、吃音症の可能性があります。

学童期〜思春期

学童期〜思春期は、おおむね6歳から18歳の時期にあたります。この年代で10歳を過ぎても吃音の症状が続くのは、特に男性に多いといわれています。

この時期には、言葉がうまく出てこない「難発」の症状が目立つようになり、話すこと自体に苦手意識を持つ方も少なくありません。また、どもりやすい言葉や苦手な発音を避けるために、他の単語へ言い換えたり、会話を避けたりするような行動が見られることもあります。

「自分の話し方は人と違う」と自覚し始めることで、人前で話すことに対して強い不安を感じるケースもあり、心理的な負担が大きくなる時期といえるでしょう。

成人期

18歳以上の成人期の吃音症では、学童期〜思春期と同様に、話すことを避ける回避行動をとる方が多く見られます。

しかし、社会に出ると仕事や日常生活で会話を避けられない場面が増えるため、吃音との向き合い方が重要になる時期です。特に、電話対応や会議、プレゼンテーションなど、言葉を使う業務に対して強い不安を感じる方が多いでしょう。

そのため、自身が苦手とする単語や発話のパターンを把握し、適切な対処法を身につけることが大切です。大人の吃音症の方が仕事を円滑に進めるポイントを後述しているので、そちらもぜひチェックしてみてください。

吃音症のチェックリスト

厚生労働省が作成した吃音症のチェックリストによると、以下のうち2つ以上の症状が1年以上継続している場合、吃音症の可能性があるとされています。

  • 最初の音や言葉の一部を繰り返す
  • 最初の音を引き伸ばす
  • 言いたいことがあるのに、最初の言葉が出づらく、力を込めて話す
  • これらの話し方の特徴が、変動はあるものの1年以上続いている

ただし、このチェックリストは子どもを対象としたものであり、大人向けのものではありません。大人の吃音症が疑われる場合は、専門機関への相談が必要です。

参考:吃音、チック症、読み書き障害、不器用の特性に気づく「チェックリスト」活用マニュアル(厚生労働省)

吃音症の診断と治療

吃音症かどうかを正確に診断するには、専門の医療機関を受診する必要があります。

吃音症の診断は、心療内科や精神科、耳鼻咽喉科などで受けられますが、すべての医療機関が対応しているわけではありません。まずは、吃音症に詳しい病院が近隣にあるか調べてみてください。自身で探すのが難しい場合は、お住まいの自治体の役所に問い合わせてみましょう。

診断にはアメリカ精神医学会が作成した国際的な診断基準「DSM-5」が用いられ、医師はこの基準をもとに、本人や家族への聞き取りなどを通じて総合的に判断します。

吃音症に確立された治療法はありませんが、言語聴覚士による訓練で症状が緩和されるケースも少なくありません。また、吃音症によるストレスが原因で不安障害や適応障害といった二次障害が生じている場合は、薬物療法や精神療法が検討されることもあります。

大人の吃音症の方が仕事を円滑にすすめるためのポイント

吃音症がある場合、職場でのコミュニケーションや業務の進め方に不安を感じる方も多いでしょう。働くうえでの負担を軽減して仕事をスムーズに進めるには、いくつか押さえておきたいポイントがあります。

ここでは、吃音症とうまく付き合いながら働くための工夫や支援制度について紹介するので、ぜひチェックしてみてください。

吃音症や自身の吃音について理解を深める

吃音症と向き合いながら働くには、まず自身の症状の特徴や吃音が出やすい場面について理解を深めることが重要です。

例えば、「大勢の前で話すときに症状が出やすい」とわかれば、人前でのプレゼンテーションが少ない職場を選ぶと負担を軽減できます。逆に、電話対応や接客が必要な職場は話す機会が多いため、事前に対策を考えておかなければなりません。

このように、吃音が出やすい状況を把握しておくと、適した職場や業務内容を選びやすくなります。また、話し方の工夫やリラックスできる環境づくりなど、症状に合わせた対策を取り入れるのもポイントです。

吃音について周りに伝え、環境を調整してもらう

業務の負担やストレスを減らすには、吃音について周囲に伝え、業務環境を調整してもらうのも対策のひとつです。

例えば、吃音の影響で対応が難しい業務がある場合や、配慮してほしい点があれば、上司に相談してみるのがよいでしょう。相談するときは、自身の症状や困っていること、希望する配慮内容を具体的に伝えるのがポイントです。

ただし、「吃音について周囲に知られたくない」「上司に話しづらい」と感じる方も少なくありません。その場合は、まずは信頼できる先輩や同僚に相談する、または産業医や社内カウンセラーに話を聞いてもらうなど、自分にとって話しやすい相手を探してみてください。

話す以外の手段も活用する

コミュニケーションの手段は、必ずしも会話だけとは限りません。

例えば、ジェスチャーを交えて伝えたり、メールやチャットツールを活用したりすると、話さなくても意思を伝えやすくなります。こうした方法を取り入れれば、会話への負担を軽減できるでしょう。

また、会議や報告など、どうしても口頭で伝える必要がある場面では、事前に資料を作成して伝えるポイントを整理しておくと、緊張やストレスを和らげるのに役立ちます。

公的な支援を利用する

発達性吃音は、発達障害者支援法の支援対象に含まれており、症状によっては障害者手帳の取得が可能です。

障害者手帳を取得すると、障害者雇用での就職や、障害福祉サービスを利用できるようになります。障害者雇用では障害のある方が働きやすい環境が整えられているため、合理的配慮を受けやすいのがメリットです。

また、就労に向けたサポートを受けられる就労移行支援や、自立した生活を目指すための自立訓練(生活訓練)といった制度もあります。以下で、これらのサービスについて詳しく紹介するので、必要に応じて活用を検討してみてください。

就労移行支援

就労移行支援は、障害のある方が一般企業への就職を目指す際に利用できる制度です。就職に向けたサポートを受けながら、自分に合った職場を見つけるのに役立ちます。

この制度では、利用者一人ひとりの特性や希望に応じた個別支援計画が作成され、それぞれのペースで就職を目指せるのが特徴です。具体的な支援内容としては、就職に必要なスキルを習得する訓練や職場見学、応募書類の作成支援、模擬面接などが挙げられます。また、ビジネスマナーやコミュニケーションのトレーニングも行われるため、無理なく働くための実践的なスキルを身につけられるのもメリットです。

さらに、就職後の定着支援も実施しており、働き始めてからの悩みや課題についても相談できるため、長く安定して働きたい方にとって心強い支援サービスでしょう。

自立訓練(生活訓練)

自立訓練(生活訓練)は、障害のある方が自立した生活を送れるようサポートする制度です。

食事や入浴、家事やお金の管理など、日常生活に必要なスキルを習得するための訓練を受けられます。また、就労に向けた準備として、ビジネスマナーやコミュニケーションスキルを学べるプログラムを受けることも可能です。

特に、「すぐに就職するのは難しいが、生活基盤を整えたい」「コミュニケーションに不安がある」といった方に適しており、自立した生活を目指す第一歩として活用できます。自立訓練(生活訓練)を経て就労移行支援に移行するケースも多く、「まずは生活リズムを安定させ、その後に就職を考えたい」といった方にもおすすめです。

どもる症状でお困りの方は専門機関に相談してみよう

吃音症の症状は人それぞれ異なり、環境や対策次第で負担を軽減できます。仕事や日常生活で話すことに不安を感じている方は、専門機関に相談することで適切な支援を受けられるかもしれません。

Kaienでは、発達障害*の強みを活かした就労移行支援や自立訓練(生活訓練)を提供しています。就労支援では独自の適職アセスメントを通じて自分に合った仕事を探せるほか、自立訓練では人間関係の築き方や具体的なコミュニケーション方法について学ぶことが可能です。

無料の見学会や説明会も随時開催しているため、吃音の症状で働きづらさや負担を感じている方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます。

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