「真面目すぎる自分」との向き合い方〜訓練を通して得た経験と気づき〜

▪年齢:20代半ば
▪診断名:ASD
▪特性/苦手:対人コミュニケーション、処理速度が遅い、ストレスコントロール
▪現在の状況:就労移行支援で訓練中


幼少期の自分〜周囲と馴染めなかった日々〜

ーーー幼い頃はどんなお子さんでしたか?

「明るく、子どもらしい子ども」だったと周囲から言われることが多かったです。ただ、自分の思い通りにならないとゴネる癖がありました。

特に幼稚園の頃は周りに馴染めず、よく教室から抜け出してしまうこともありました。そのことを母が先生に相談した後に個別療育を受けるようになり、小学2年生の時、正式にアスペルガー症候群の診断がつきました。

ーーーご自身の性格を一言で表すなら?

「真面目」な性格だと思います。遅刻や無断欠席、締め切りを過ぎてからの提出はしないよう心がけています。ただ、真面目すぎて時には必要以上に自分を責め立てる傾向があるので、それはこれから直したいと思っています。

ーーー周囲と自分は何か違うと感じたことはありますか?

他人と比べて客観性が少し弱いと思います。これをしたら相手はどう思うかということを想像するのは不得意です。

特に相手の気持ちを察したり、状況に応じた会話をしたりするのが苦手でした。例えば、中高生時代に場の空気を読まずに話し続けてしまい、周囲をしらけさせてしまったことがあったのですが、当時はそのことに気づいてもいませんでした。

Kaienでさまざまな経験を積み、「客観的に自分を見つめることの大切さ」を学び、少しずつ改善できていると感じています。

Kaienでの訓練を通じて得た学び

(MacBook ProにiPadを繋いで作業をするNさん)

ーーーKaienに入る前はどんなことをされていましたか?

大学を卒業後、就職には至らず、親の勧めでKaienの訓練を受けることにしました。

大学時代は特にアルバイトなどの経験もなく、社会人としての経験を積む機会はありませんでした。

ーーーKaienで訓練を始めようと思ったきっかけは?

公的機関が運営するサポートステーションに通っており、そこでKaienを紹介されました。

他にもいくつか候補はあったのですが、親の勧めや、自分にも一番合ってるかなと思って決めました。

ーーー訓練を通じて、新しく発見したことはありますか?

「なぜ自分は絵が好きなのに、それを仕事にしようとしないのか?」とずっと悩んできました。

しかし、Kaienでの訓練で自己分析を進める中で、「作品を評価するのは他人」だと認識し、絵を描くことを仕事にする難しさを改めて感じているところです。今後はどのようなことを目標にして自分の技術を伸ばしていくか、模索中です。

ーーーストレス対処法として効果的だった方法は?

ストレスを感じたときは、その場から一旦離れることを徹底しています。

この方法は訓練の中で学んだことでもありますが、自分なりに試行錯誤して見つけた対処法でもあります。以前はストレスがたまっても無理をし続けていましたが、今では「休むことも大切」と意識するようになりました。

ーーー苦手なことへの対策は見つけられましたか?

面談や会議では必ずメモを取るようにしました。話の流れを整理し、後で振り返りやすくするためです。おかげでメモの取り方はうまくなりました。

また、タスク管理アプリを活用しています。他に、集中しすぎてしまうことを防ぐためにポモドーロ・テクニックを取り入れ、一定の時間ごとに休憩を挟むようにしています。

ーーー訓練の中で印象に残っているエピソードはありますか?

一度、訓練中に締め切りを少し過ぎてしまい、自分を責め過ぎてパニックになってしまったことがありました。後日スタッフの方に謝りに行ったのですが、「僕は君のことを理解しているけれど、ちょっとガッカリした」と言われたことが印象に残っています。

人との信頼関係は簡単に崩れてしまうので気をつけないといけないなと思いました。

また、自分に対してだったらいくら責めてもいい、と思っていたのですが、自分を責め過ぎても居合わせた他の人も困るものなんだなということが分かりました。

ーーーKaienで一番長く所属していたコースは?

デザイン登竜門とIT登竜門のコースです。デザインとITのソフトを学ぶコースで、IT登竜門の方は正直あまり楽しいと思えなかったので向いていなかったみたいです。

デザイン登竜門は、僕が美大出身ということもあって、「これを作るにはこうしたほうがいいだろう」と無意識のうちに勝手にアレンジして、指示された通りのことができなかったこともあり、規定の課題に取り組むことの難しさを感じました。

ーーー訓練を通して自分が変わったと思うことはありますか?

こうしたら相手がどう思うかといったことを考える客観性が以前より身についたと思います。

ーーー自立訓練から就労移行に移籍して変化したことは?

自立訓練はアットホームな雰囲気だったのですが、就労移行支援ではオフィスのような環境なので、気が引き締まりました。靴を脱ぐか脱がないかといった違いや、スタッフの方も比較的フォーマルな感じの服装をされているので「ちゃんとやんなきゃ」みたいな感じです。

ーーーご自身の得意と苦手なことは?

ルールをきっちり守ることは得意です。ただ、突発的な出来事には弱いと思います。

現在、オフィスのレイアウトプランニングやポスターのデザイン、事業所内の掲示物のデザインなどを手がけており、デザインの仕事は好きなので楽しいです。

ーーー訓練を通して、今後の就職活動や仕事に役立ちそうなことは?

就業において、対話がとても大事だと分かりました。こちらからどんどん質問や報告をしないと、自分がどれだけできているか分からないし、逆に相手から言葉を引き出せなければどうして良いかが分からないので。

今後の就職活動や仕事では、質問や報告を徹底することを心がけようと思っています。

自分に合った環境を重視した就職活動

ーーー現在、就職に向けてどのような取り組みをしていますか?

自己分析を徹底し、自分に合った仕事を探しています。

具体的には、ハローワークの求人をリストアップし、自分の譲れない条件を整理することで、働きやすい職場を見つけられるようにしています。

ーーー大学時代の就活と今では、考え方に違いがありますか?

かなり違います。大学時代の自分は、恥ずかしいくらい就職の負担を理解していなかったので。

自分の障害との向き合い方が分からなかったし、健常者と同じ就職を希望していたし、インターンシップでは面接で好きなように話して失敗したこともありました。

その頃よりも、自分の特性と会社が求めている人物を比べて判断できるようになったとは思います。

ーーーどんな仕事が自分に合いそうだと感じていますか?

落ち着いた環境で、安心して作業できる仕事が向いていると感じています。

周囲が騒がしいと集中できないため、事務職のような静かな職場が理想です。

ーーー今後の就職活動の軸は?

まず、自宅から通いやすい職場を探しています。業務内容は、事務を中心とした仕事を希望しています。美術関係の仕事で、発達障害*がある人が就ける仕事は選択肢が少ないということもあるのですが。

現在は職歴を作ることを優先したいと考えており、収入面についてはそれほど重視していません。

ーーー就活に向けて準備したいことはありますか?

履歴書にも記載できるので、簿記などの国家資格を取ってみたいと思っています。

ーーー今後の目標は?

現在は両親と暮らしていますが、将来的には親元を離れ、自立した生活をしたいです。

付録 〜Nさんのこと〜

(動物園や水族館に行って写真を撮るのもNさんの趣味の一つ。絵の資料にも使用しているそうです)

ーーー趣味や休日の過ごし方は?

趣味は絵を描くことです。

最近は、絵を描いていることが多いです。パソコンにタブレットをつないで、デジタルイラストを中心に描いており、SNSにも投稿しています。

体力を使わずにできる趣味なので、自分に合っていると感じています。

ーーー最近、嬉しかったことは?

SNSに投稿したイラストが、3万いいねを獲得したことです。好きなことを続けて、それを多くの人に見てもらえるのは嬉しいですね。

*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われています。

この記事を読んだあなたにおすすめの
Kaienのサービス