転職を繰り返すことで、理想の職場へ。1社にこだわる必要はない!

Kaienで実施しているプログラムの一つである『ようこそ先輩』は、Kaienの就労移行支援を修了し、実際に働かれている先輩方の生のお話を聴ける会です。本記事は、そのインタビュー動画の内容を編集し、記事にまとめています。

今回取り上げるのは、4歳の時にASDと診断され、卒業後は何度か転職を重ねて、自分に合う職場にたどり着いたOさん。そんなOさんに、転職をした理由と流れについてお話を伺いました。

インタビュー実施日:2024年11月2日

筆記試験は通過しても、面接で落ちていた学生時代

学生時代の就活では、5社受けても内定をもらえませんでした。筆記試験は通過できたのですが、面接で落とされてしまいます。面接練習でアドバイスされた「笑顔を見せる」を実践することで6社目でようやく内定をいただきました。

しかし、配属先が現場作業の部署だったため、このときは内定を辞退しています。

派遣社員になったが、2年弱で派遣切りに

その後2017年4月に、常用派遣社員になりました。常用派遣とは、就職した派遣会社ではなく、提携している他社に派遣されて仕事をする働き方です。就職した派遣会社では正社員として扱われます。正規の正社員よりも給料が低い場合が多く、地方に転勤する確率が高い欠点もあります。

また、派遣会社に入社しても派遣先に採用されないと仕事が始まりません。派遣先との面接は、通常の就職面接よりも簡単と言われていますが、私は落とされてしまうことが多かったです。さらに、派遣先の企業からは知識や技術が十分にあると思われているため、分からないことがあっても教えてもらえない場合がありました。

派遣会社に在籍中は2社に派遣されました。1社目は空調機器メンテナンス業でしたが、休日出勤や6日以上の連勤も多い会社でした。

2社目は建築設計業です。専門学校で建築を学んでいたため関連性が高く、職場環境も良かったのですが、求められるスキルには対応できないことがありました。

そして、2019年2月に3月での派遣切りを宣告されてしまいました。

2019年Kaienに入所するものの、新型コロナウイルス感染症の拡大により、求人がなくなる

派遣切りを宣告されたと母に伝えたところ「就労移行支援のKaienを検索してみて」と言われたことで、Kaienを知りました。そして2月中にはKaien新宿に見学に行きました。机の配置を見て派遣先を思い出すこともあり迷いましたが、事務職を目指すためにKaienの利用を決意しました。

約6ヶ月の待機期間後、2019年9月17日よりKaien横浜(現:Kaien東神奈川)で訓練を開始します。修了まで一貫して週替(しゅうがわり)の訓練を行いました。また、1日でも早く就職したいと思っており、個人ワークでは求人検索を行うことが多かったです。

しかし、新型コロナウイルス感染症の拡大により、新規求人がほとんどなくなってしまいました。2020年の5〜6月頃には求人を出す企業も増えてきましたが、採用条件が厳しく、5社に応募しましたが、落ちてしまいました。

そのため、同時に2020年9月まで、二級建築士の受験勉強も行っていました。

K市の区役所に就労

2020年の9月中旬、Kaienでの訓練を開始して1年経過した頃、K市の障害者雇用の求人を紹介してもらいました。ちょうど二級建築士の受験が終了した頃だったので、採用試験への挑戦を決意しました。

そして、実技試験・面接試験共に合格し、無事に内定をいただくことができました。そして2020年11月にKaienを修了し、12月からK市の区役所総務課で働き始めました。

業務内容は事務補助です。郵便物の仕分けやプリンターの用紙補充、調査関連の業務も行いました。原則として来庁者とは関わらず、電話応対も郵便局への集荷依頼以外は行っていません。

また、K市の障害者雇用では午前と午後に10分程度、途中休憩をもらえるようになっており、とてもありがたかったです。

通勤の不便さから、自宅近くの区役所へ異動

恵まれた環境でしたが、自宅から職場の最寄り駅までのバスの本数が少なすぎるという問題がありました。出勤は問題ないのですが、16時に退庁して16時50分に最寄り駅につくと、家方面まで行くバスが19時台までありません。

そんな中、自宅から最も近い区役所が障害者雇用を行う方針となったのです。通勤の問題を抱えていた自分に白羽の矢が立ち、2021年4月に異動できました。

2021年の10月には5.5時間勤務から、この雇用契約でのフルタイムである6時間勤務に変更しました。

これで勤務地にも職場環境にも恵まれましたが、給料が3年目以降は上がらない・5年以上の勤務は原則不可・6時間以上の勤務ができないなどの問題がありました。

さらに給料が派遣社員時代よりも低く、残業も一切認められません。8時間勤務の経験があり、もう少し働きたいと思っていた私には、もどかしさがありました。

より良い就労条件を求めて、現職へ

(趣味は旅行だというOさん。この写真は2024年3月に行った北海道での一コマだそうです。「稚内から乗車した特急サロベツ4号の車内からの様子で、区間は宗谷本線の抜海〜勇知となります。グリーン車を利用していましたが、私以外誰も利用していなかったため、せっかくなのでぬいぐるみを2人を鞄から出して撮影しました」)

そこで、2023年頃から本気で転職を考えるようになり、マイナーリーグ(精神・発達障害の方に特化したKaienが運営する求人サイト)を中心に求人を調べ始めました。条件として、勤務地は通勤時の着席率が高い地域、職種は事務職としました。

ある企業の一般事務職の求人に応募しようとしましたが、このときは履歴書の準備が間に合わず、応募を辞退することになってしまいました。その後、現職の企業ともう1社を受けることにします。どちらを先に受けるか迷いましたが、現在の勤務先の方から受けました。

試験はすべてオンラインで行われ、書類提出から最終面接まで2週間程度でした。そして、最終面接を行った日の夕方には、内定の連絡をいただきました。2023年6月のことです。

区役所での業務引き継ぎがあったため、入社は9月1日になりました。勤務地は希望通り池袋で、配属先は「本人確認チーム」です。登録型派遣に登録された情報と提出された本人確認書類が、一致しているかどうかを照合しています。

情報入力の正確性には自信があり、最新のミス発生率は0.1%以下でした。

午前・午後にそれぞれ15分の休憩取得が可能で、とてもありがたいです。勤怠を安定させることで、2024年6月より早期無期雇用登用となりました。9月24日にはオフィスが移転して、現在に至ります。

1社にこだわらなくてもいい!転職の選択肢を持つ

今悩んでいる方に最も伝えたいのは「1社にこだわらなくて良い」ということです。かつての日本では一つの会社に長く勤める・定年まで働くのが良いという風潮がありました。しかし、その考え方は令和の時代にはあまり合わなくなっています。

もちろん、自分に合う会社で待遇も良いのであれば、定年まで勤めても良いと思います。ライフスタイルや社会の変化など、自分に合わなくなったと感じたら、転職を考えてみてはいかがでしょうか。

しかし、1年未満などの短いスパンでの転職は、よく考えて行うのがおすすめです。場合よっては転職という選択肢があることを覚えておいていただけると幸いです。

所属拠点:Kaien東神奈川


※インタビュー内容については、表現を一部改変しています。

*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われています。

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